土肥: 電子辞書って学生が使っているイメ―ジがあるのですが、当時のモノも学生を中心に火がついたのですか?
上田: いえ、シニア層を中心に売れました。50代以上になると、老眼が進んで、小さな文字が見えにくくなりますよね。紙の辞書は文字サイズが小さいので、「調べにくい」といった声がありました。
土肥: なるほど。電子辞書は文字サイズが大きいので、シニア層にとっては使いやすいわけですね。そもそも、この市場に参入するにあたって、ターゲットはシニア層に絞り込んでいたのですか?
上田: 1号機を投入する前に、簡易型の電子辞書「TR-2000」(9800円)を扱っていました。電卓の画面に文字を打ち込むと、意味が出てくる。いま振り返ると、画面サイズが小さくて使い勝手はすごく悪かったと思うのですが、当時はとても好評でした。この商品はシニア層を中心に売れたので、「もっと見えやすいように」という意味で、画面を大きくしました。
土肥: 発売当初はシニア層を中心に売れたということですが、学生が使うようになったのはいつごろからでしょうか?
上田: 電子辞書を展開する中で、「高校生にもニーズがある」ことが分かってきました。特に「古語辞典が入った電子辞書を使いたい」という声が多かったんですよね。古語辞典をどのように使っているのか調べたところ、高校生のときにしか使っていない人が多いことが分かってきました。ということであれば、古語辞典を収録すれば、使い勝手がいいのではないかと考え、01年に高校生専用のモデル「XD-S1200」(3万円)を発売しました。
学校で使う辞書として、英和、和英、国語、漢和、古語の5つを収録したので、社内からは「これはいける」といった声が多かったのですが、爆発的には売れませんでした。なぜか。家電量販店などでの売れ行きはよかったのですが、高校での反応が厳しくて。当時、多くの先生は「辞書は紙でひくものだ」といった考えが根強かったので、学校での営業活動は苦戦しました。
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