ネットに接続できなくても、カシオの電子辞書が売れている秘密水曜インタビュー劇場(客の声公演)(5/6 ページ)

» 2019年04月10日 08時00分 公開
[土肥義則ITmedia]

「調べたい」と「勉強したい」の声

土肥: カシオの時計で、看板商品といえば「G-SHOCK」。トラックに踏まれても、ビルの屋上から落としても、壊れないことをウリにしていますよね。ちょっと衝撃を加えただけで液晶が壊れるなんて、同じ会社として許されなかったのでは?

上田: そーなんです。液晶が割れることに開発チームは心を痛めましたが、「次は、壊れにくいモノをつくろう」となりました。液晶は押されたり、ひねられたりすることに弱いんですよね。この弱さから守るために、液晶の内側と外側にカバーをつけることに。はさむような形にして、液晶を割れにくい構造にしました。

 04年、液晶が割れにくい堅牢設計モデル「XD-L4600」(4万2000円)を発売しました。その後、「部首や画数が分からないので、手書き入力で調べることはできないか」という声があったので、手書き入力機能を搭載することに。「液晶は白黒ではなくて、カラーで見たい」という声があったので、カラーモデルを投入することに。

通学時に安心して持ち歩けるようにした「XD-L4600」

土肥: 手元の資料を見ると、電子辞書市場でカシオは15年以上シェアトップが続いていますよね。その要因をどのように分析していますか?

上田: お客さんの声を聞いて、改良を重ねてきたことが大きいのかもしれません。先ほどご紹介したように、1号機は万人受けするようなモノでした。その後、商品を展開することで、さまざまなニーズがあることが分かってきました。高校生向けのモデルだけでななく、中学生や小学生向けも開発しました。ちなみに、小学生には高学年と低学年向けに、それぞれ用意しました。

 お客さんから「フランス語を勉強したい。電子辞書を出してくれないか」といった声があったので、さまざまな言語に対応したモデルを発売しました。いまではフランス語、ドイツ語、スペイン語/ポルトガル語、イタリア語、ロシア語、中国語、韓国語を出しています。

土肥: 現在、販売しているモデルを数えると、ひー、ふー、みー、よー……25モデルもある。

上田: これまでたくさんのモデルを出してきましたが、新しいタイプを出しても、すべての人のニーズを満たすことは難しいなあと感じています。お客さんから「こうしたモノを出してほしい」という声があれば、できるだけ対応してきました。新しい機能を搭載すると、またお客さんから「こうしたモノを出してほしい」という声があります。

土肥: 最近はどんな声が多いのでしょうか?

上田: 以前は「調べたい」という声が多かったのですが、2010年代に入って「勉強したい」という声が増えてきました。電子辞書を使って、勉強したいという人が増えてきまして、さまざまなことに対応してきました。例えば、受験改革の一環として、いま多くの高校生は英検(実用英語技能検定)を受験しています。こうした背景があるので、電子辞書の中に、試験対策のコンテンツを搭載しました。英単語を覚えるドリルだけではなく、予想問題、過去問題など、本番の試験と同じようにマークテスト方式で勉強できるようにしました。

英語学習アニメ「リトルチャロ NY編」を搭載し、動画学習を可能にした「XD-N6500」

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