土肥: いまでも、たまに「辞書は紙でひくものだ」といった声を聞きますが、当時の拒否反応はかなり強かったのですか?
上田: 電子辞書についてご説明しても、「じゃあ、紙の辞書はいらないのか」といった声をたくさんいただきました。もちろん、紙の辞書を否定しているわけではありません。紙には紙の良さがあって、電子には電子の良さがあると思っています。電子は持ち運びが便利で、速く調べることができる。というわけで、「紙の辞書との併用はいかがですか?」といった感じで、ご説明して回りました。
それでも、すぐには普及しませんでした。国語の先生はなかなかご理解していただけなかったのですが、英語の先生は違いました。英単語の発音を聞くことができることと、意味を調べていて分からない単語が出てくればそれも簡単に調べることができる。この2つの機能を高く評価していただき、「これを使えば、生徒が勉強に興味を示してくれるのではないか」といった声が増えてきました。
その後も、お客さんの声を受け、改良を重ねていきました。「重い」という声があれば、軽くして、「かさばる」という声があれば、薄くして。そんなこんなで3年ほど経つと、国語の先生も認めていただけるようになって、徐々に広がっていきました。
土肥: ということは03年ころから、高校生の手元に電子辞書が広がったわけですね。
上田: 薄くして軽くしていったわけですが、想定していなかった声が届きました。それは「壊れた」でした。
土肥: 壊れた? 不良品だったのですか?
上田: いえ、そういうわけではありません。品質に問題はなかったのですが、高校生は扱いがちょっと雑ですよね。鞄の中に電子辞書が入っているのにもかかわらず、鞄を放り投げる。鞄の中に電子辞書が入っているのにもかかわらず、自転車に激しく乗る。ガタガタの道路でも、強い振動を受けながら走行する。そうしたタフなシーンに液晶が耐えられなくなって、割れてしまうケースが出てきました。
シニアの方々は家のリビングなどで使うことが多く、大事に大事に扱ってくれる。このようなシーンを想定していたので、開発チームは液晶が割れるなんて想定していませんでした。
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