「空気を読む人」は組織に危機をもたらす、同調圧力のワナスピン経済の歩き方(1/5 ページ)

» 2019年04月16日 08時20分 公開
[窪田順生ITmedia]

 皆さんが属する組織にも必ず1人や2人、「空気を読まない人」がいるのではないか。せっかくチーム内でまとまりかけた話を、「それを言っちゃあおしまいよ」的な意見を出して、ちゃぶ台返しにしてしまう。あるいは、TPOをわきまえない発言や行動をして同僚たちから「それ、今やるか?」とイラッとさせてしまう。

 「和」をもってサラリーマンとす、という日本企業の暗黙ルールなどまったく意に介さない、協調性ゼロで自由過ぎる立ち振る舞いをする人のことである。

 一般的に、こういう人は周囲から腫れ物のように扱われる。「上」の覚えもめでたくないので仲良くなったところでサラリーマン的メリットは少ない。むしろ、かかわれば「もらい事故」に巻き込まれる恐れもある。要するに、「トラブルメーカー」のような扱いにされるのだ。

 ただ、報道対策アドバイザーとしてさまざまな組織の「危機」の現場を間近に見てきた立場で言わせていただくと、これは「空気を読まない人」への正しい評価ではない。確かに、彼らは日常業務の中ではいろいろな軋轢(あつれき)を生み出すかもしれないが、危機発生時には必要不可欠な人材である。

 むしろ、「空気を読む人」のほうが「トラブルメーカー」になってしまう。なぜなら「同調圧力」に流れやすいので現実から目を背けがちで、事態を取り返しのつかないほど悪化させてしまうケースが多々あるからだ。

「空気を読む人」のほうがトラブルメーカーに? (写真提供:ゲッティイメージズ)

 全国ウン千万の「空気の読む人」を敵に回すようなことを言って恐縮至極だが、事実として日本でトップレベルの危機管理を誇る組織でも、「空気を読む」ことで取り返しのつかない「危機」が誘発されている。

 一昨年12月に起きた「のぞみ重大インシデント」である。

 博多発、東京行きの新幹線「のぞみ34号」が、台車に14センチの亀裂が入ったまま走行。あと3センチ亀裂が進めば完全に破断していたというもので、かなり早くから「焦げたような匂い」や、「モヤ」「異音」を確認して、東京の総合指令所にも報告されていたものの、車両点検をすることなく、そのまま運行が継続されたことが問題とされた。

 世界に誇る安全性と正確さで知られる新幹線を運行するエリートたちが、なぜこんな「雑」な判断をしたのか。多くの人は首をかしげるだろうが、筆者からすると典型的な「空気を読む人」が陥りやすいヒューマンエラーと言わざるを得ない。

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