新幹線という、日本でもトップレベルの「安全」を誇る組織でさえ、こういう「罠」に陥ってしまうのだから、普通の会社組織などなおさらである。だからこそ、「空気を読まない人」の役割が重要となってくるのだ。
例えば、不正が発覚した組織というのは、ほぼ例外なく「否定」からスタートする。そんなことはあるわけがない。よく確認しろ。何かの間違いじゃないのか。そんなやりとりの中で、「不正ではない」という方向を補強する情報を集めていく傾向がある。
そして次に起きるのが、「事実の矮小化(わいしょうか)」である。
不正といえば不正だけど、悪意があったわけではない。現場の独断だ。制度が悪い。構造的な問題があるうんぬんと理由をつけて、「そこまで会社の存亡にかかわる問題ではない」という、自分たちに都合のいいストーリーをつくっていく。
筆者の経験では、こういうムードになったとき、「空気を読む人」から沈黙していく。
裏で「おかしいな」「へんだな」とささやきながら、異論は挟まずお口にチャックとなる。社内の人間関係や、今後のキャリア、住宅ローンなどが頭によぎることもあるが、もし余計なことを口走ってしまったら、「そんな文句を言うのなら、お前がやれ!」と面倒なことに巻き込まれることを避けるためのだ。
しかし、「空気を読まない人」は違う。彼らはそもそも、こういう立ち振る舞いをすれば評価が上がる、という組織人としてのセンサーが働かないので、「同調圧力」にもピンとこない。「空気を読む人」が飲み込んだことも平気でズバズバ言ってくれるのだ。
「これどう考えても不正でしょ。なんで世の中やお客さんにちゃんと説明しないの?」
こういう場面を目にしたのは一度や二度ではない。つまり、「空気を読まない人」は、内部論理で我を見失った組織を「正気」に戻す、という大事な役割があるのだ。
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