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» 2019年04月17日 07時00分 公開

“いま”が分かるビジネス塾:店舗消滅! 「駅前の光景」が“荒廃”するこれだけの理由 (3/3)

[加谷珪一,ITmedia]
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路面店舗の価値が暴落

 サービスのネット化が進む金融機関や書店に比べれば、飲食店はまだまだ有利だが、それでも社会のネット化と無縁ではいられない。近年、ウーバーイーツに代表されるようなネットのデリバリー・サービスが拡大しているが、すでに多くのファストフード・チェーンがウーバーに参加しており、店に行かなくても食事を楽しめる環境が整っている。

photo 米国など欧米圏を席巻するウーバーイーツ(写真はイメージ、提供:ゲッティイメージズ)

 米国ではすさまじい勢いで食事のデリバリー化が進んでおり、ランチを食べに出掛ける人が激減。多くのレストランが閉店に追い込まれている。その結果、ニューヨークといった大都市ではこれまでには考えられなかった現象が発生している。それは不動産価格の大変動である。

 従来、通行量の多い道路に面する店舗物件の賃料は青天井であった。法外な価格であっても、確実に集客が見込めるので、借り手はいくらでもいた。ところが、デリバリーなどのネットサービスが普及したことで、こうした物件の賃料が総崩れになっているのだ。

 米国で起こったことは、そのままの形ではないにせよ、日本に波及してくるのは確実であり、外食産業のデリバリー化は今後、増えることはあっても減ることはないだろう。

 日本においても、主要交差点の角に建つビルや駅の正面に建つビルの1階は、バカ高い賃料になるというのが常識だった。こうしたビルにテナントとして入居するのは、きまって銀行や証券といった金融機関であり、その周囲には外食チェーン店が集まっていた。

 だが、金融機関のビジネスがネットにシフトすると、店舗は無くならないにしても、必ずしも路面店である必要はなくなる。外食チェーンもデリバリーの割合が高まれば、通りを1つ隔てた場所の方が逆に賃料的には採算が合うというケースも出てくるだろう。

 すでに都内では、主要交差点のビルから銀行、ファミレス、書店といったテナントが相次いで撤退し、風景が一変するケースが出てきている。次のテナントが見つからないため、ビル運営会社が苦肉の策で、自社運営するレストランを入居させるということもあるようだ。駅前に著名なサービス系企業の看板が並ぶという光景は、10年後には完全に消滅しているかもしれない。

加谷珪一(かや けいいち/経済評論家)

 仙台市生まれ。東北大学工学部原子核工学科卒業後、日経BP社に記者として入社。

 野村證券グループの投資ファンド運用会社に転じ、企業評価や投資業務を担当。独立後は、中央省庁や政府系金融機関など対するコンサルティング業務に従事。現在は、経済、金融、ビジネス、ITなど多方面の分野で執筆活動を行っている。

 著書に「AI時代に生き残る企業、淘汰される企業」(宝島社)、「お金持ちはなぜ「教養」を必死に学ぶのか」(朝日新聞出版)、「お金持ちの教科書」(CCCメディアハウス)、「億万長者の情報整理術」(朝日新聞出版)などがある。


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