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フル・フロンタルが夢見た「サイド共栄圏」の実現可能性元日銀マン・鈴木卓実の「ガンダム経済学」(3/5 ページ)

» 2019年04月25日 07時00分 公開
[鈴木卓実ITmedia]

コロニーの環境負荷が減る可能性

 ただ、資源問題が解決しそうだとしても、月やコロニーにとってはそもそも、地球を無視してまでサイド共栄圏を形成するメリットが無くてはいけない。実は、地球と関係を断つことでコロニーは環境負荷を減らすことができるとみられるのだ。

 フル・フロンタルがサイド共栄圏を提唱した宇宙世紀0096では、地球の人口は20億人まで減少しているが、環境問題の悪化やコロニー落としのダメージで、食料もエネルギーも地球だけでは賄えない状況だった。地球連邦政府は月面都市やスペースコロニーへの徴税と借款の利息で、食料やエネルギーを購入していたのだろう。治安維持のために駐留している地球連邦軍の経費を割増請求した可能性もある。

 月面都市やスペースコロニーは、全ての居住可能な空間が人工的に作られている。コロニー開発時代初期に建設された「ムーン・ムーン」では、機械文明を否定する「ヒカリ族」による政教一致体制で、外部と隔絶した統治が行われていた。外壁やソーラーパネルの破損といったアクシデントがなく、人口や環境負荷の高い技術が抑制されれば、発電設備等が経年劣化するまで、問題なく生活できそうである。

 これは、資源の流出や、過度の環境負荷がなければ、スペースコロニーは極めて持続可能性の高い循環型社会を形成できることを意味する。

 スペースコロニー、そして月面都市にとって、地球への食料輸出があると環境負荷が大きくなる。物資の移動が宇宙で閉じていないので、質量保存の法則がある以上、地球に輸出された質量に見合う物質を地球から宇宙に上げなければならない。コストもかかるし、地球向けの食料生産のために、スペースノイドの生活に必要な量を超えて、生産設備を設け、資源を消費することになる。

 地球への食料輸出がなくなれば、スペースノイドの負担が減り、月面都市とスペースコロニー(つまりサイド共栄圏)で低コスト・低環境負荷の経済システムを目指すことができる。

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