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フル・フロンタルが夢見た「サイド共栄圏」の実現可能性元日銀マン・鈴木卓実の「ガンダム経済学」(4/5 ページ)

» 2019年04月25日 07時00分 公開
[鈴木卓実ITmedia]

月面都市が享受する意外なメリット

 さらには、サイド共栄圏における「盟主」とも言える月面都市は、ブロック経済化で意外なメリットを手にすると考えられる。それは各コロニー・サイドの防衛力強化に伴う莫大な軍需だ。

 一代でコロニーの支配者までのし上がった者がいる。「機動戦士ガンダムZZ」に登場する、宇宙世紀史上でも稀有な身の程知らずのスタンパ・ハロイである。民間人に扮していたハマーン・カーンをよりにもよってハーレムメンバーに迎え入れようとしたあげく、自業自得の末路を迎える濃いキャラだ。

photo 観光コロニー「タイガーバウム」の主、スタンパ・ハロイはハマーンに平身低頭(『機動戦士ガンダムZZ』第41話「ラサラの命」より)

 そのスタンパが支配する観光コロニー「タイガーバウム」は、およそ地球連邦の法の支配が行き届いてるとは言い難い。コロニー公社の職員を買収するなどの非合法手段で占拠したのだろう。

 戦中の混乱期で、かつ中立をうたっていることもあり、地球連邦政府はスタンパの統治を黙認していたと思われる。スタンパはコロニー外壁にド派手な龍の塗装をし、型落ちとはいえ、水陸両用MS(俗にいう水泳部)を多数私有した。本人の趣味なのか、タイガーバウムが香港などを模した水辺の多いコロニーではあったものの、水陸両用MSの運用が理にかなっていたのかは定かではない。

 火器も搭載されており、メンテナンスも行き届いている。また、カスタマイズ機まである。この手のキャラは、私費を投じる以上に不正蓄財をするのがお決まりなので、租税なども着服したことだろう。それだけコロニー1基でも経済力は侮りがたい。地球連邦政府への租税公課に相当する額を充てれば、各コロニーが独自にMSを配備することは十分に可能だ。

 スタンパはもっぱら保身のために武装したが、他のコロニーやサイドでも内部の治安維持、そして対外的な防衛の必要性が上がっていくことで、宇宙用MSやさらなる軍備が必要になっていくとみられる。

 地球連邦とネオ・ジオン残党の争いが収まっても、ジオン軍の攻撃や後の紛争でコロニー崩壊を人類が経験した以上、サイド共栄圏内での緊張は続くだろう。地球連邦軍による治安維持が期待できなくなった世界では、各サイドが軍備増強を図る可能性が高い。地球連邦政府の重税から脱した経済的な余力と、軍事産業の思惑が、軍備増強に拍車を掛ける。

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