竹中: 今週あたり、社長に呼ばれて、全社展開の計画を指示されたのではないですか?
日野下は驚く。その通りだったからだ。
日野下: 全く、何でも見抜いていらっしゃる。次のプロジェクトもお願いします。
と、にわかに個室の外が騒がしくなった。
お客たちが口々にあいさつをする間を縫って、店主に話しかける胴間声が聞こえる。
「やっぱり、日野下さんはここか! そんなことだろうと思ったよ。なに? 竹中さんも一緒か。それは好都合だ」
「お邪魔するよ」。勢いよく襖が開く。
一同は、反射的に立ち上がり、同時に叫んだ。
「しゃ、社長!」
小田: 日野下さんに話したのに3日たっても何も反応がないから、こちらから出向くことにしたよ。
福島、加藤、片桐の3人が、慌てて退出しようとする。
「社長、では、私たちはこれで失礼いたします」
小田: いやいや、いいんだ。君たちもいてくれ。そうか、皆は同期なんだな。私も昔はこの店でよく同期と飲んだものだ。この部屋にもよく来たな。
日野下: この個室もその頃からあるんですか?
小田: ああ、内装はきれいになったがな。ここで何度上司に説教されたことか。ははは、大丈夫、今日は説教じゃないから安心したまえ。
さてと、本社3部門の改革は軌道に乗った。皆、よく頑張ってくれた。感謝している。だが、これからの事業部門、営業・製造はそうはいかないぞ。本社以上に昔のやり方が残っているし、こだわりも強い。
日野下: はい。
小田: それに事業部門は当社の核だ。誰もが会社を支えてきた誇りを持っている。コストについても製造部門は円でなく銭単位で取り組んでいる。そこに「生産性を高めましょう」と訴えてもなかなか支持は得られん。
竹中: 本社より時間がかかるかもしれませんね。人数も多いですし。
小田: そうだ。息の長い取り組みになる。もしかするとこの改革には終わりはないのかもしれない。新しい技術は次々でてくるからな。
そうなると、今のプロジェクト体制では限界じゃないかと思う。今回はたまたまうまくいったが、各部門からメンバーを出すスタイルだと、コミットメントの維持が難しくなる。そこで、だ。改革をミッションとし、改革遂行の権限を与えられた組織をつくろうと思う。経企、IT、機能、事業からメンバーをアサインし、兼務はさせない。
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