懐かしい音と匂いを楽しむ「SL」ハシゴ旅 「もおか号」「SL大樹」を巡る1日杉山淳一の「週刊鉄道経済」GW特別編(1/6 ページ)

» 2019年05月03日 08時00分 公開
[杉山淳一ITmedia]

 栃木県にはSLを走らせる路線が2つある。真岡鐵道の「もおか号」と、東武鉄道鬼怒川線の「SL大樹」だ。つい最近、真岡鐵道で運行している2台の機関車のうち1台を売却、東武鉄道が落札したと報じられた。「もおか号」と「SL大樹」どちらにも興味が湧いてきた。2つのSL列車を乗り比べよう。どんな魅力を発見できるだろうか。

photo 真岡鐵道の「もおか号」

 真岡鐵道真岡線は茨城県の下館と栃木県の茂木を結ぶ。焼き物で有名な益子町を通るほか、終点の茂木駅がある茂木町は、サーキット「ツインリンクもてぎ」がある町としてモータースポーツファンに知られている。東武鉄道鬼怒川線は関東の奥座敷として名高い鬼怒川温泉を通る。日光も近い。東武鉄道が長期にわたって開発、宣伝してきただけあって知名度は高い。

 同じ栃木県といえども、宇都宮を中心に西と東に離れた地域だ。東京から見ると方角が違う気がする。ひとまとまりに見えない。だからこそ、2つの地域を渡り歩くルートは面白い。SL列車ハシゴ旅だ。

photo 東武鉄道の「SL大樹」

「つくばエクスプレス」経由で真岡駅「SLキューロク館」へ

photo 今回の旅のルート(地理院地図を加工)

 「もおか号」は下館駅を午前10時35分発。都心から下館駅へ行くルートは2つ。宇都宮線または東北新幹線の小山駅から水戸線に乗り換えて下館駅、あるいは、つくばエクスプレスで守谷駅、関東鉄道常総線に乗り換えて下館駅だ。山手線の駅から行く場合、最も安いルートは宇都宮線小山経由で、これで行こうと思ったけれど寝坊した。30分のロス。

 慌ててルートを再検索したところ、つくばエクスプレス経由が早かった。新しい通勤路線は線路も高規格で最高速度が高い。守谷駅からの関東鉄道は、ディーゼルカーだけど意外と早い。水海道までは複線だし、そこから下館までの単線区間もダイヤが良くできているようでスムーズだ。東京〜小山〜下館を結ぶ三角形を描くと、つくばエクスプレス+関東鉄道は三角形の底辺のような短絡ルートでもある。

photo 都心から真岡鐵道へ「つくばエクスプレス」が近道
photo 守谷から下館へ「関東鉄道常総線」。非電化複線区間を持つ珍しい路線

 予定通り、下館駅午前9時42分発の真岡鐵道のディーゼルカーに乗れてほっとした。ここからSLに乗らないのか。乗りたいけど、あえて乗らない。下館駅から「もおか号」に乗るなら、1時間遅く出発してもいい。しかし、今日は約1時間早い列車で先行する。なぜなら、真岡駅に隣接する「SLキューロク館」を見物しようと思ったから。その開館が午前10時。私が乗ったディーゼルカーは10時6分に真岡に着く。1時間ほど見学時間を見込んだ。

photo 真岡鐵道のディーゼルカー。ロングシート車とクロスシート車がある
photo 真岡へ向かう途中で回送中の「もおか号」とすれ違った。ディーゼル機関車にひかれているので、これは「後ろ向き」状態
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