ボルボV60クロスカントリーとプロジェクトE.V.A.池田直渡「週刊モータージャーナル」(4/5 ページ)

» 2019年05月06日 07時15分 公開
[池田直渡ITmedia]

 CAFEはその名の通り、企業全体での平均燃費での規制クリアを求められるので、どんなにCO2排出量が低いモデルを持っていようとも、そのモデルが売れないと平均は下がらない。19年に対して半減に近いレベルが求められる25年規制を電気自動車(EV)だけでクリアしようと思えば、CO2排出がゼロのEVの販売台数を少なくとも全販売台数の半分近くまで押し上げていかなくてはならなくなる。

 しかしEVのバッテリーは安くても200万円程度といわれており、乱暴にいえば車両価格はプラス200万円になる。ベーシックモデルより200万円高いクルマを販売数の半分売ろうというのは普通に考えれば不可能な話だ。

 例えば学校の先生がクラスの平均点を上げようとする場合、5人や10人の成績上位者の点を更に良くすることだけでは、目標を達成できない。まずは成績の悪い子供を何とか平均まで引き上げること。次に並の成績の子供にもっと良い点を取ってもらうこと、それでカバーできない部分を上位の生徒に頑張ってもらうしかない。

 まずは内燃機関のみのクルマ、つまり成績の悪い子供をマイルドハイブリッド化して、平均を引き下げるグループを消し、次にストロングハイブリッドで並の子供の得点を引き上げる。最後にプラグインハイブリッドとEVで上位の子達にさらに引っ張ってもらうしかない。

 CAFEをクリアできないとどうなるかといえば、罰金的な意味合いを持つクレジット購入を義務づけられる。規制をクリアした会社の余剰枠を買い取らなくてはならない。それは恐らく利益を著しく圧迫することになるだろうし、そうなればこの先の規制に対応していくための開発費用を捻出することがどんどん苦しくなる。

 この連載を読んでいただいている読者の方はご存じのように、トヨタは今これらの問題で困ったメーカーからの依頼で、ハイブリッドシステムの特許を無償供与して、各社に提供する体制を調えつつある(4月15日のトヨタハイブリッド特許公開の記事参照)。

 何が何でもトヨタのシステムを使う必要はないが、それ以外に完成度の高いストロングハイブリッドを他社に供給できる余力のある連携先があるかどうかというところだ。しかし、いずれにしても自動車産業の中で、さまざまな連携を実現していかないと、多くのメーカーは生き残れない時代が来ているのではないか。

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