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» 2019年05月09日 08時00分 公開

ジャーナリスト数土直志 激動のアニメビジネスを斬る:ディズニー、Hulu…… 動画配信の覇権争いは日本アニメをどう変えるか (7/7)

[数土直志,ITmedia]
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ハリウッド企業、グループ内の「縦割り」に課題

 ワーナーの問題は巨大企業にありがちな縦割りのビジネスシステムだろう。日本で思われている以上に、ハリウッド企業の社内での横の取り組みは難しいからだ。

 グループ間の連携の難しさは、ソニーも同様だ。ソニー・ピクチャーズ・エンタテインメントは、ハリウッド6大メジャーのなかで唯一の日本資本である。しかしこれまで日本アニメやコンテンツに熱心とはいえなかった。アイアンマンやウルヴァリンが登場するヤングアダルト向けの「マーベルアニメ」などはあったが、継続的な動きになっていない。

 むしろ日本アニメのグローバル展開では、同じソニーグループのソニー・ミュージックエンタテインメントと子会社のアニプレックスが熱心だ。アニプレックスは『鋼の錬金術師』『ソードアート・オンライン』『Fate』シリーズなど多くのグローバルヒット作を世に送り出している。アニプレックスの製作能力とソニー・ピクチャーズの劇場配給・放送網がつながれば大きな相乗効果を生むだろうが、グループ内の別企業でありスムーズに進むわけでない。

 それでもソニー・ピクチャーズは、日本アニメの持つ効果に無関心ではないようだ。17年に米国で最大の日本アニメ配給会社ファニメーションを子会社化した。『ドラゴンボール』シリーズや『進撃の巨人』の米国でのヒットを創り出してきた会社である。それを今後どう生かすのかは、日本のアニメ関係者にとって気になるところだろう。

 ソニー・ピクチャーズの映像配信プラットフォームは他社に一歩も二歩も出遅れている。これまで傘下にしていたSony Crackleは、3月に売却したばかり。

 プレイステーション系ゲーム機を通じたコンテンツ配信サービスPlayStation Networkのユーザーが8000万人を超えており、これを活用する手はある。しかしプレステはゲーム事業のソニー・コンピュータエンタテインメントと、また別のグループ会社の管轄になる。有力企業、ツールを抱えながらグループとして生かしきれないソニーにとって、配信ビジネスの先行きは前途多難だ。

 残るハリウッドのビッグプレイヤーの1つ、NBCユニバーサルもまた映像配信プラットフォームへの参入を表明している。同社の日本法人はアニメに強かった旧パイオニア、旧ジェネオンの流れをくんでおり、ラインアップも豊富だ。これらを活用するのか、あるいはグローバルに手を組むことで オリジナルの日本アニメ製作に乗り出すのか、今後の発表次第だ。しかしそのハードルは高くない。

 ワーナー、ソニー、NBCユニバーサルが、日本アニメの配信にどれだけ力を入れられるかはまだ不明瞭なところが多い。そしてNetflixやAmazonプライム・ビデオ、ディズニーほど作品に投資できる資本力があるかも課題だ。

 仮に日本アニメも含めた配信オリジナル作品に本格進出しても、早い段階で競争から振り落される可能性も少なくない。しかし何もしないとそもそも戦略も何もありえない。それだけにディズニーグループを筆頭にハリウッド系企業と日本アニメは、動画配信を軸に当面は関係をより深めていく可能性が高そうだ。

著者プロフィール

数土直志(すど ただし)

ジャーナリスト。メキシコ生まれ、横浜育ち。アニメーションを中心に映像ビジネスに関する報道・研究を手掛ける。証券会社を経て2004 年に情報サイト「アニメ!アニメ!」を設立。09年にはアニメビジネス情報の「アニメ! アニメ! ビズ」を立ち上げ編集長を務める。16年に「アニメ! アニメ!」を離れて独立。主な著書に『誰がこれからのアニメをつくるのか? 中国資本とネット配信が起こす静かな革命』 (星海社新書)。


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