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ディズニー、Hulu…… 動画配信の覇権争いは日本アニメをどう変えるかジャーナリスト数土直志 激動のアニメビジネスを斬る(4/7 ページ)

» 2019年05月09日 08時00分 公開
[数土直志ITmedia]

 日本アニメと関係がなかったわけでない。日本のゴールデンタイムで何シーズンにもわたり放送された『スティッチ』があるし、マーベルヒーローたちを日本アニメに大胆にアレンジした『マーベル フューチャー・アベンジャーズ』もある。しかしいずれも既にある自社キャラクターを活用したものだ。先の『ベイマックス』も原作はマーベル・コミックだから、ここでも自社囲い込みが鮮明だ。ハリウッドコンテンツの中でも、日本で飛び抜けて成功している自信がその理由かもしれない。

ディズニー、傘下のHuluで日本アニメ進出?

 しかしこのままディズニーが日本アニメに無関心のままでいるとも思えない。その理由はライバルのNetflixの存在だ。

 Netflixのオリジナル番組カテゴリーでは、『DEVILMAN crybaby』『ULTRAMAN』といった日本アニメがこの1、2年で急増している。今後の予定タイトルまで含めるとめじろ押しだ。これはNetflixが日本アニメで成功していることを示している。データの数字を重視するNetflixは、日本アニメが視聴者を強く引き付けるジャンルと位置付ける。

 ライバルが有力コンテンツとしてラインアップしているジャンルを自分たちが持たなかった場合、競争戦略としては致命的となる。今後ディズニーは、オリジナルの日本アニメをやらざるえない局面が来るはずだ。

 しかし自社番組としてセレクト感の強い「Disney+」では、日本アニメはなじみづらい。そこで鍵になるのが、今はディズニー傘下のもう1つの映像配信プラットフォームHulu(米国)でないだろうか。

photo ディズニー傘下の強力な映像配信プラットフォーム、Hulu(米国版、公式サイトから引用)

 Huluのこれまでの経緯は複雑だ。もともとのハリウッドメジャー4社の共同出資会社として誕生した。それが21世紀フォックス買収でディズニーが60%の株式を保有、さらに先頃ワーナー出資分10%をHulu自身が買い取った。

 現在はディズニーグループが70%、残り30%をNBCユニバーサルの親会社であるコムキャストが保有する。4月末には、ディズニーがこのユニバーサルの持ち分の獲得を目指してコムキャストと交渉中とのニュースも伝えられた。動きは早い。先行きは不透明だが、とはいえ既に株式の2/3を握るディズニーの傘下にある。

 しかし複数の有力株主が並び立つ企業の戦略は、時としてあまりうまく回らない。Huluも有料契約者数は2500万人強と、Netflix、Amazonプライム・ビデオに大きく引き離されている。

 それでもHuluはIT技術が得意で、リーダーシップの強い株主と豊富な資本と番組が投入されれば大きな可能性がある。何よりも既に幅広い作品が並ぶHuluは、囲い込み型のDisney+に対して開放型のサービスとして別の展開が可能だ。Disney+より多様な番組をラインアップできる。そこに日本アニメが入り込む余地がある。

 HuluとDisney+との住み分けがまだ曖昧だが、むしろHuluがNetflixやAmazonプライム・ビデオ型になりそうだ。

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