土肥: 会社の同僚と、酒の席で盛り上がることはよくありますよね。「こんな新商品はどうか」「このネタはおもしろいかも」といった会話をよくすると思うのですが、明日になったら忘れている。「あれ、昨日どんな話をしていたっけ?」と。覚えていても、「昨日は盛り上がったけれど、シラフになって考えてみると、そんなにおもしろくないよね。さ、仕事、仕事」といった感じで、酒の席で盛り上がった話を実現することは難しい。
瀧本: ところが、翌日、焼き鳥屋で飲んでいた若いメンバー4人が、ワタシのところにやって来たんですよね。「阪神タイガース版の辞書をつくりたいと思っているのですが、無理ですかね」と。この話を聞いたとき、直感的に「これはイケル!」と感じました。
土肥: ほー。それは、またなぜ?
瀧本: ワタシは京都出身で、子どものころから大の阪神ファンなんです。このことを知っていて、ワタシのところに相談しに来たのかどうか分かりませんが、その場で「オレがやる!」と言ってしまいました(苦笑)。
既存の辞書をタイガース仕様にするには、どうすればいいのか。ケースに大きなロゴマークと縦じまを入れて、帯には「六甲おろし」の歌詞を掲載して、見返しには甲子園球場の写真を載せる。現在、完成している形のアイデアが30分ほどで浮かんできました。
ただ、アイデアは出てきたものの、著者の先生方から了承は得ていませんし、デザイナーさんにも相談していません。本来であればこうした仕事の進め方はよくないのですが、「今回は特別だ!」と自分に言い聞かせて、とにかく実現に向けて走り出しました。
土肥: 辞書の著者に相談するって、大変そうですね。家に行っても、パイプをくわえて「なんのようじゃ?」と聞かれ、帯に「六甲おろし」の歌詞を掲載した辞書をつくりたいといっても「なぬ? けしからん!」と怒られそうで(汗)。
瀧本: 恐る恐る「こういうプランがありまして……」とお伝えしたところ、予想以上に先生方はのりのりになられて。著者メンバーのなかに、阪神ファンは1人もいなかったのですが、「それなら、ここはこのようにしよう」といった感じで、話がどんどん前に進んでいきました。
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