なぜあの商品は売れた? 行列研究所が謎に迫る
インタビュー
» 2019年05月15日 08時00分 公開

水曜インタビュー劇場(阪神・広島公演):市場は縮小しているのに、なぜトラとコイの国語辞典は好調なのか (2/6)

[土肥義則,ITmedia]

若手メンバー4人が発案

土肥: 『三省堂国語辞典 第七版』のタイガース仕様とカープ仕様が売れているそうですね。タイガース仕様を見ると、ケースには大きなロゴマークと縦縞(じま)のデザインがあしらわれていて、ビニール表紙はチームカラーの黄色。帯には「六甲おろし」の歌詞を掲載して、表紙をめくったところに、阪神甲子園球場の写真を掲載している。

 一方のカープ仕様を見ると、ケースにはカープ坊やが描かれていて、ビニール表紙はカープレッドで染め上げられている。帯には「それ行けカープ」の歌詞を掲載していて、表紙をめくるとマツダスタジアムの写真を見ることができる。どちらもファンにとってはたまらない一冊になっているわけですが、なぜこのような辞書をつくることになったのですか?

『三省堂国語辞典 第七版 阪神タイガース仕様』のケース

瀧本: 紙の辞書の売り上げを見ると、20年以上厳しい状況が続いているんですよね。理由は2つあって、1つは媒体が多様化しているから。スマートフォンなどの登場によって、どこでも誰でも気軽に調べることができるようになりました。もう1つは、少子化の影響を受けているから。辞書を購入するのは学生が多いので、その人口が減ってしまうとどうしても売り上げが厳しくなる。この2つの理由によって、紙の辞書は苦戦が続いていました。

 こうした状況に対して、辞書を扱っている出版社が指をくわえて見ているだけではいけません。利用者を増やさなければいけないのですが、どうすればいいのか。モノとしての魅力を打ち出していかなければいけませんし、お金を出して手元に置いておきたいと思ってもらわなければいけません。こうした課題に対して、編集部は編集部なりに、営業部は営業部なりに、「こうすればいいのではないか」「いや、こうしたほうがいいよ」といった感じで、さまざまなアイデアを出してきました。

 そんな日々を送ってきたなかで、2年前のある日、営業の若いメンバー4人が会社の近くにある焼き鳥屋で飲んでいました。「どうすれば辞書のすそ野を広げることができるのか」「どうやったらモノとしての魅力を伝えることができるのか」といった話題で盛り上がっていて、ゼロから何かをつくるのではなくて、既存の辞書を使って何かできないかといった話になったそうです。

 老若男女問わず、多くの人が好むモノは何か。といった話をしているなかで、スポーツに着目したんですよね。ただ、スポーツといってもたくさんある。サッカーもあるし、ラグビーもあるし、テニスもある。大衆性ということを考えると、やはり野球ではないか。プロ野球で最も人気があるのは巨人ですが、熱いファンがたくさんいるところはどこか。こうした会話を繰り広げていくなかで、熱狂的なファンが多い「阪神タイガースにちなんだ辞書をつくってみてはどうか」といった話になったそうです。

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