市場は縮小しているのに、なぜトラとコイの国語辞典は好調なのか水曜インタビュー劇場(阪神・広島公演)(1/6 ページ)

» 2019年05月15日 08時00分 公開
[土肥義則ITmedia]

 辞書を買ったのはいつですか? このように聞かれても「学生のころに購入したけれど、社会人になってからは買ってないなあ」「ここ数年、開いたこともないよ。ネットで調べればいいでしょ」といった人も多いのでは。

 書店に足を運ぶことはあっても、辞書コーナーをじっくり見る機会はほとんどないかもしれないが、59年の歴史を誇る『三省堂国語辞典』がヒットを連発していることをご存じだろうか。2018年に「阪神タイガース仕様」(以下:タイガース仕様、3000円+税)を発売したところ、4万部を記録し、国語辞典の異装版(装丁などは違うが、掲載している内容はほぼ同じ)としてはヒット商品に。

 第二弾として、今年3月に「広島東洋カープ仕様」(以下:カープ仕様、3000円+税)を販売したところ、予約だけでAmazonランキングの辞典部門で1位を獲得。発売後ひと月足らずで、初版2万部の半分を超える1万部以上を売り上げるなど、“二匹目の鯉を狙って”見事手にしたのである。

 あるデータをみると、辞書の市場規模は20年以上も縮小しているのに、なぜ三省堂の国語辞典は売れているのか。その秘密を探るために、ページをパラパラとめくってみると、「用例」がオモシロイのである。例えば、カープ仕様で「鯉」を調べてみると、『広島カープのこと。「―、今年も断トツ・―党(トウ)』と書かれているではないか。

第二弾の『広島東洋カープ仕様』もヒットしている

 もちろん、ふざけているわけではない。辞書としての機能はきちんと押さえながら、その上で鯉党のハートをがっちりつかむ用例が次々に出てくるので、ニヤニヤしてしまうのである。「辞書」といえば、「カタイ」イメージがあるが、なぜ球団愛を感じられるモノをつくることになったのか。同社で編集を担当している瀧本多加志さんと奥川健太郎さんに話を聞いた。聞き手は、ITmedia ビジネスオンラインの土肥義則。

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