土肥: その後、どのような編集作業を行ったのですか?
瀧本: 辞書というのは全体のバランスを考えて、精密につくられているんですよね。項目を1つ入れるだけで、「これを入れるんだったら、これも入れなきゃいかん」となる。逆に「これをとるのであれば、これもとらなきゃいかん」となる。項目にふれることができるのは、改訂のときだけなんですよね。
というわけで、タイガース仕様をつくる際、項目をさわらないことを決めました。ただ、せっかくつくるので、ファンにこっそり“ウインク”をしたいなあと考えました。じゃあ、変えられるところはどこか。用例しかないと考えました。タイガースのことを考えて3カ所だけ、用例を新しくしました。
「3カ所」と聞くと、「少ないなあ」と思われたかもしれませんが、この作業を始めるときりがないんですよね。あれもできるし、これでもできるしといった感じで。用例はワタシが考えたのですが、著者でもないワタシがたくさんの用例を考えて、たくさん掲載するのはいかがなものか。といった気持ちもあったので、たくさん追加するのはよくないなあと思い、3カ所にしました。
土肥: 「甲子園」を調べると、「―は、阪神ファンの聖地である」と書いていますよね。思わずニヤッとしてしまうので、「あ〜、もっとたくさん読みたいなあ」という気分にさせられちゃいました。「血」のところに、「猛烈な阪神ファンの血管には、白と黒の縦じまの―が流れている」といった用例も追加してほしかったですね(笑)。ま、それにしてもよく売れました。
瀧本: 発売前にプレスリリースを出したところ、ものすごく大きな反響がありまして。印刷中だったのに、Amazonの辞典部門で1位になりました。改訂版ではなく、内容がほぼ同じであるにもかかわらず、4万部も売れるなんて、想像もしていませんでした。
土肥: ただ、残念なのは、阪神タイガースの成績ですよね。2018年のシーズンは、セ・リーグで最下位でした。もし優勝していれば、辞書はもっと売れていたかも(たらればですが)。
瀧本: 昨シーズンの成績は、大変残念でした。三省堂の人間としても、いちファンとしても、ものすごく悲しい(涙)。
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