4年前の状況のままなら日傘男子市場は生まれず、そのまま消え去ってしまったでしょう。しかし19年はいわゆるPLC(プロダクトライフサイクル、製品が市場に登場してから退場するまでのサイクル)で言うところの、初期市場から一般市場へとシフトするタイミングと言えそうです。この間にある大きなミゾ=「キャズム」を飛び越えられそうな勢いが出てきました。
キャズムとは、マーケティング・コンサルタントのジェフリー・ムーア氏が提唱した概念です。キャズムを超えて市場の中で大きなボリュームを占める初期多数派(アーリーマジョリティー)、及び後期多数派(レイトマジョリティー)といったユーザーに採用されるようになると、その商品は広く普及するというものです。
このグラフで言えば、男性向け日傘は今ちょうどキャズムを越えるかどうかという段階にあると考えられます(☆マーク)。外部要因と企業努力の積み重ねが重なり合って、「男が日傘を持つなんて……」というこれまでの常識を一気に飛び越えようとしていると私はみています。では、キャズムを越えるにはどのような企業努力が必要なのでしょうか。
マーケティングにおいてはターゲティングを誰に設定するのかがもっとも重要と言われます。その際に最初に来るのが、男性か、女性か、ユニセックスかという問題です。
例えば、化粧品。従来は化粧品は基本的に女性向けというのが業界の常識でした。
日本の化粧品市場は2兆5000億円(17年度)で、毎年微増・安定傾向にあります。そのうち、男性用化粧品市場は1200億円ほどです(いずれも矢野経済研究所調べ)。この10年間で200億円ほど成長し、化粧品市場の「救世主」とも言われています。大手メーカーも男性向け化粧品ブランドを続々と発売し、男性用スキンケア商品が開発され、小売店に専用コーナーができるまでになっています。
大手化粧品メーカーの調査によると、海外では「ビジネスにおいて肌に気を使うのは当然」「肌のマネジメントができる人は仕事のマネジメントもできる」「きれいな肌は出世の武器になる」という意識が強いです。しかし、日本の男性ビジネスパーソンのスキンケア実施率は非常に低い傾向にありました。「男性がグローバルにビジネスを展開していくには見た目の印象をマネジメントする必要があります」と、メーカー側が啓蒙していく必要があったのです。
最初、大塚製薬が08年に男性用化粧品「UL・OS(ウルオス)」を発売した頃は、世の中に男性用化粧品市場はほとんど無く、「化粧は女性がするもの」という常識を覆すまでには至りませんでした。
しかし同社の地道なマーケティングによって徐々に市場はキャズムを越え、今では大手メーカーのほとんどが男性用化粧品市場に参入するまでになりました。ターゲットをシフトしてキャズムを越えるまでには、ある程度の時間と企業の地道なマーケティングが必要なのです。
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