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今夏の流行は「五輪のかぶる傘」より「日傘男子」!? トレンド生む真の条件とは繁盛店から読み解くマーケティングトレンド(2/4 ページ)

» 2019年05月30日 07時30分 公開
[岩崎剛幸ITmedia]

「日傘男子」、一度は失敗!?

 実は筆者も4年ほど前に「日傘男子」を流行らせようと男性向け日傘をクライアント企業で企画してもらい、大都市圏の大型店舗中心に販売したことがありました。「男の傘は地味」という従来の価値観を一変させ、カラフルだったりかっこよかったり、ファッショナブルな傘を作って30〜40代のおしゃれな男性向けに売り出しました。

 一部のメディアでは物珍しかったこともあり取り上げられましたが、大きな反響は得られず、店頭でも予想以上には売れなかったこともあり、男性向け日傘を定着させることはできませんでした。

失敗の最大の理由は……

 その際になぜ売れなかったのかを調べましたが、最大の理由は「日傘は女性が差すもので、晴れの人に男が傘を差すのは恥ずかしい」というものでした。特にこの時には市場に全くなかったカラフルな男の日傘を企画したこともあり、非常に目立ちました。私も当時、できるだけ日傘を差すようにしていましたが、回りからの視線が何となく気になり(笑)差し続けられませんでした。

 「日傘=女性のもの」という常識。

 「日傘を差す=弱弱しく美を意識する男性」。

 つまり「日傘=恥ずかしい」という意識を抜け出すきっかけがありませんでした。

 しかし、それから毎年のように夏の気温は上昇しています。この2年間の夏の気温の上昇幅は特に大きく、特に東京の18年の7月、8月は連続して平均気温が28℃を超えています。

photo 夏の東京の日平均気温(気象庁のWebサイトより筆者作成)

 つまり「慣習・常識を覆すだけの材料が出そろい、国が推奨することで男性の日傘の土壌が整ってきた」のが今夏なのです。

 日本の傘市場は約600億円程度(筆者推計。日本洋傘振興協議会によると洋傘の年間消費量は1億2000〜1億3000万本程度)ですが、男の日傘が広がればこの市場を1割程度増やすと私はみています。

 日本における傘市場は小さく、人口減少に伴ってさらに小さくなると言われてきました。しかし、今まで使わなかった属性(男性)が利用することによって全く新しい市場が創られることになるのです。

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