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今夏の流行は「五輪のかぶる傘」より「日傘男子」!? トレンド生む真の条件とは繁盛店から読み解くマーケティングトレンド(4/4 ページ)

» 2019年05月30日 07時30分 公開
[岩崎剛幸ITmedia]
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縮む市場は「時間×ひたむきな努力」で開拓

 傘メーカーの老舗、小川(名古屋市、小川恭令社長)では、数年前から男性向け日傘に注目し、オリジナル商品やライセンスブランド商品を発売しています。今、そのメンズ日傘が「18年度で2倍の売れ行き」(同社)で伸びています。

photo 小川のメンズ日傘の例(同社Webサイトより引用)

 スーツ姿の男性がさしても恥ずかしくない落ち着いた色目の日傘、持ち歩いても邪魔にならない小型軽量かつ晴雨兼用の日傘、グローバルブランドとのコラボ日傘などを作ったところ、店頭で飛ぶように売れているのです。

 同時に同社では、熱中症予防は「子どもにとってはもっと深刻な社会的課題である」として、従来のママ向け日傘、パパ向け日傘に加えて、子ども日傘を19年にリリースして話題になっています。全国の雑貨専門店などでは同社の子ども日傘コーナーがポップアップ付きで設置されるなど、小売店の店頭での注目も集まっています。

 傘のような中小規模で、しかも縮小傾向にあったマーケットでも、環境の変化にあわせて

1.ターゲットシフト

2.機能・デザインシフト

3.売場シフト

を進めていけば、市場は拡大できるという事例です。

 加えて何より、市場が成長していくまでの時間をじっと耐え、企業努力を重ねていくという「時間×ひたむきな努力」によって新たな市場は出来上がるのです。

 同社も男性向け日傘を作り出した頃は、「全く市場が存在しなかった」ところに投入したため、市場の反応は冷ややかでした。ブルーオーシャンどころか、それを「欲しがる人がいなかった」からです。しかし、地道なマーケティングにより徐々に市場が変化してきました。そして19年、男性の日傘はキャズムを実際に越え始めたのです。

 シュリンク市場を成長市場に変えるためのヒントが、今夏の「日傘男子」から見て取れます。男性の皆さんも、今年は日傘男子になって自らの商品のマーケティングを考えてみてはいかがでしょうか。

著者プロフィール

岩崎 剛幸(いわさき たけゆき)

ムガマエ株式会社 代表取締役社長/経営コンサルタント

1969年、静岡市生まれ。船井総合研究所にて28年間、上席コンサルタントとして従事したのち、同社創業。ファッションを専門分野とした流通小売業界のコンサルティングのスペシャリスト。「面白い会社をつくる」をコンセプトに各業界でNo.1の成長率を誇る新業態店や専門店を数多く輩出させている。街歩きと店舗視察による消費トレンド分析と予測に定評があり、最近ではテレビ、ラジオ、新聞、雑誌でのコメンテーターとしての出演も数多い。

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