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Appleのどこまでも本気な環境への取り組み循環型経済の構築(3/6 ページ)

» 2019年06月21日 05時00分 公開
[林信行ITmedia]

競合製品への転用もOK

 Appleは同社の製品を100%クリーンエネルギーで賄う目標を立て、サプライヤー企業に強制はせず、あくまでも協力をお願いする形での呼びかけ「Supplier Clean Energy Program」を実施した。

 現在、その呼びかけに16カ国44社のパートナーが賛同した。高品質な部品を製造する日本は、Appleのサプライヤーがとりわけ多い国の1つで、シャープ、ソニー、東芝、村田製作所、パナソニックなど100以上の名だたる企業がサプライパートナーになっている。

「Clean Energy Program」の呼びかけに賛同した44社には日本企業の名前も

 その割に日本からの賛同パートナーは驚くほど少ないが、それでも3社は賛同している。イビデンエンジニアリング、日本電産と太陽インクだ。このうちイビデンは国内最大級の水上太陽光発電を開発している。

 Appleは、世界中のこうしたパートナーに対して、どうやったら環境配慮型のエネルギー運用に移行できるか相談に乗ったり、技術の共同開発や場合によっては資金面などでの援助も行ったりしているという。

イビデンはもともと自社でも計画していたという国内最大級の水上太陽光発電を開発

 「再生エネルギーへの移行の難しさは、その会社がどんな製造をしているかはもちろん、近隣にどのような再生エネルギー源があるかなど一社一社かなり条件が異なっています。このため、私たちと賛同サプライヤーとの関係も一社一社でかなり異なったものになっています」とジャクソン氏は語る。

 中小のサプライヤーにとっては移行のコストも大きな壁になる。コストが高くなってしまうと、実践する企業も増えてはくれない。ただ、多くの企業が移行を進めれば、進めた分だけコスト的なハードルも下がるとジャクソン氏は考えている。

 ここで素朴な疑問が浮かんだ。このようにAppleの技術や資金の協力を得て実現した再生エネルギーでの製造工程を、果たしてAppleの競合製品などに利用してもいいのだろうか。

 この点をジャクソン氏に聞くと、うれしそうに「もちろんです。こうした取り組みが池に起きた水の波紋のように広がってくれることは、結果として皆をハッピーにするんです」と笑顔を浮かべて話した。

 「賛同サプライヤーの多くは、まずはApple向けの生産だけ再生可能エネルギーで運用するという形でスタートすると思います。しかし、それがきっかけでいずれは全事業を再生可能エネルギーで営むようになることでしょう。そうなれば他社製品が、その恩恵を受けるのは当然のことです」(ジャクソン氏)

 よく環境関係の取り組みを紹介すると、企業イメージをアップするための「マーケティング戦略」といううがった見方をする人が出てくるが、こうした姿勢からも、Appleのそれはただのマーケティング戦略に止まらないことがよく分かる。

 いずれはAppleのこうした努力のおかげで、「弊社の製品も100%再生可能エネルギーで作っています」とうたうライバル企業が出てくるかもしれない。しかし「それでもOK」というのがAppleのスタンスなのだ。

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