テレビ局が吉本興業を出入り禁止にすべき理由専門家のイロメガネ(6/8 ページ)

» 2019年07月09日 07時58分 公開
[中嶋よしふみITmedia]

闇営業トラブルは「業務上のトラブル」である

 吉本興業のような大手事務所と取引停止なんてできるわけがない、と考える人も多いだろう。現在テレビ各局は、出演部分のカットや同じ吉本興業のタレントに交代させるなどの対応をしているが、こういった対応も甘すぎると指摘した通りだ。

 以下のQ&Aにあるように、仮に知らなかったとはいえ闇営業によって吉本興業の一部芸人は「※誕生会、結婚式、還暦祝いなどの名目で多数の暴力団員が集まる行事に出席している場合」(東京都暴力団排除条例Q&Aより)に該当する可能性がある。

※Q6

 条例に「暴力団関係者」と規定されています(第2条第4号)が、どのような人が「暴力団関係者」に該当するのですか?

A

 条例において「暴力団関係者」は、「暴力団員又は暴力団若しくは暴力団員と密接な関係を有する者」と規定されており(第2条第4号)、「暴力団若しくは暴力団員と密接な関係を有する者」とは、暴力団又は暴力団員と社会的に非難されるべき関係を有していると認められる者(Q7を参照)等が挙げられます。

※Q7

 「暴力団又は暴力団員と社会的に非難されるべき関係を有している」とは、どのような場合をいうのですか?

A

 例えば、次のような場合が挙げられます。

 誕生会、結婚式、還暦祝いなどの名目で多数の暴力団員が集まる行事に出席している場合

 そしてこれが「暴力団関係者」の条件である、「暴力団又は暴力団員と社会的に非難されるべき関係を有していると認められる者」に該当する可能性もある。つまり、芸人のみならず事務所自体が極めてグレーな存在になっている。

 暴排条例では相手方が暴力団であると知っているかどうかで判断が分かれるが、前述の通り、吉本興業は闇営業が黙認状態であると所属芸人が多数コメントしている。そして営業先が詐欺集団や暴力団とは知らなかったという芸人の主張についても、部外者は確認のしようがなく、事務所の黙認自体がコンプライアンスの崩壊だ。

 吉本興業は、自社の体質がトラブルを引き起こしたことを理解しているようには見えない。今さら芸人の研修を再度行うと公表している時点で、トンチンカンぶりを露呈している。

 筆者に近い業界でいえば、金融機関の社員がトラブルを起こして逮捕されるケースがある。それが勤務時間外に起こした個人的な犯罪であれば、会社は無関係といっていい。しかし勤務時間中に顧客の口座からお金を盗んだのであれば、会社側には社員の管理責任があり弁償の責任を負う。

 今回の闇営業トラブルは後者に近く、事務所の管理下にあるべき営業でトラブルが発生している。仕事のトラブルである以上は、すべて事務所の責任だ。

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