テレビ局が吉本興業を出入り禁止にすべき理由専門家のイロメガネ(7/8 ページ)

» 2019年07月09日 07時58分 公開
[中嶋よしふみITmedia]

暴力団と企業を分けるたった一つの境目

 事情も知らない奴が好き勝手なことを書きやがって、と感じた人もいるかもしれない。しかし重要なポイントは、なぜ暴排条例で暴力団との付き合いがこれほど厳しく制限されているのか? ということだ。

 真っ当な企業と暴力団の違いは、法律を守るかどうか、つまりコンプライアンスの有無だけだ。違法行為でもうけていいのであれば、最も効率の良いビジネスモデルは暴力団だ。ライバルは少なく収益性も高い。

 今回の闇営業トラブルで詐欺の被害者に謝れといわれているように、暴力団や詐欺集団から被害を受けた経験がある人は到底許せるものではないだろう。筆者もその立場だ。

 10年以上前の話だが、賃貸住宅に引っ越しをしたところ、当初聞いていた条件とあまりにかけ離れている箇所が多数あって大家に苦情の電話を入れた。電話に出た大家は落ち着いた高齢男性らしき声だったが、こちらの苦情を困った様子で聞いていた。

 その後別の番号から折り返し電話がかかってくると、若い男性の声でオレが大家だと名乗り、「ゴチャゴチャ文句言ってんじゃねーぞ、ゴルァ!!」「若いモンを連れて行ってやろうか、あぁ!?」などと脅しをかけられた。さっきと声が違う、お前は大家じゃないだろうと指摘すると、気のせいだよ! と頭の悪そうな笑い声をあげていた。

 恐らく、大家からトラブル解決を依頼された、チンピラか暴力団のような人間なのだろう。警察にも相談をしたが、若いモンといっても本当にただ若い人のことかもしれませんしねぇ……などとのんきな対応で、仲介をした不動産会社も関係ないと逃げ回るだけだ。これ以上やり取りするのも面倒になって引っ越しせざるを得なくなった。今ならば暴排条例で逮捕されるような案件だろう。

(写真提供:ゲッティイメージズ)

 筆者の被害は軽微な方で、暴力団のからむ事件は多額の金銭を失ったり、場合によっては怪我や死亡に至る事件まで発展したりすることも珍しくない。暴力団に対していい加減な対応をするということは、将来の被害者を生む可能性がある。だからこそこれだけ厳しく条例で規制されているわけだ。吉本興業もテレビ局も、そんな当たり前のことを理解してないのではないか。

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