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“新リストラ時代”の肩たたきツール? 「適性検査」に潜む魔物河合薫の「社会を蝕む“ジジイの壁”」(3/4 ページ)

» 2019年07月12日 07時00分 公開
[河合薫ITmedia]

「適性がある=いい仕事ができる」わけじゃない

 なんとも釈然としないやり方ではありますが、それ以上に私が懸念しているのは、適性検査はあくまでも検査ってこと。「何を当たり前のこと言ってるんだ?」と思われるかもしれませんが、検査結果を転職のきっかけにするのはオススメできません。

 繰り返しますが、検査はあくまでも検査です。検査で分かった「自分の強み」と実際の仕事のパフォーマンス、そして、満足感は必ずしもつながらないのです。

 そもそも適性検査は、米国で第一次世界大戦を機に、軍隊における兵士の最適な配置を目的に心理学者の手によって進められたのが始まりとされ、最も典型的な適性検査は、1947年に公表された一般職業適性検査(GATB:General Aptitude Test Battery)です。

 これは筆記検査や器具検査など、15種類の検査から構成され、各種の職業の遂行に必要とされる能力(適性能力)との適合性を測定するツールでした。適性検査は、 個人がその職業に必要な能力やスキルを“将来的”に十分発揮できそうかどうかを予見するツールで、その適性を生かすも殺すも、その後次第です。

 適性に教育が加わり、初めて土から“芽”が顔を出します。「適性がある=いい仕事ができる」わけじゃない。個人のパフォーマンスは「個の力」とそれを支えてくれる「同僚との関係性」で引き出されるという原則が存在するのです。

photo 仕事のパフォーマンスは適性だけで決まるわけではない

 それにもかかわらず、人は「見える化」が大好物。他人に「あなたに合ってるよ!」と言われても腑(ふ)に落ちませんが、検査結果には合点がいく。その納得感が、適性検査通りに道を選択すれば最善の結果がもたらされる、という幻想につながります。

 とりわけ日本では、「学業成績ではなく人物重視!」「主観的評価じゃなく客観的評価!」という時代の流れと、ネットでの就活戦線の激化、さらには文科省が「社会人基礎力」だの「就職基礎能力」だの、「人間力」なるものを数値化したことで、適性検査市場は一気に活気づきました。

 就活、転職、管理職試験など、さまざまな場面で適性検査が使われるようになり、今や日本の検査市場は100億円規模だとされています。

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