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» 2019年07月22日 05時00分 公開

マシリトが行く!:『ジャンプ』伝説の編集長が語る「21世紀のマンガ戦略」【後編】 (6/8)

[伊藤誠之介,ITmedia]

米国のやり方には……

――日本の漫画だと、編集者がいて原作者がいて漫画家がいるといったチーム構成ですけど、アメリカンコミックではシナリオライターがいてペンシラーがいてカラリストがいるといった具合に、もっとプロダクション化が進んでいると思うんです。それについてどう思われますか?

鳥嶋: 一定レベルで描くにはいいんでしょうけど、アメリカンコミック全体のメリット・デメリットがあって。良いところは著作権が全部一元管理されている点。何か新しいものに変換しようとする時に、トップダウンで一気に動くことができる。日本だと作家さんが亡くなっていく時に、著作権管理をどうするかが問題になっているんですが、著作権が会社にあれば、会社自体は死にませんから。著作権管理がちゃんとできる。

 ただ悪いのは、個人に著作権がないということですね。ゲーム関連の人ともいろいろ話をしますけど、経営者が金持ちになっても、ヒットゲームを作った人には著作権がないんですよ。お金が入らない。ゼロから1にした人がいちばん大変なのに、この人が報われないモノ作りってなんだろう? と思いますね。

 だから産業として考えるとアメリカのやり方はオッケーだけど、個人レベルのクリエイターの視点で言うと、アメリカのやり方は僕は「ん?」と思います。

――無料の漫画が手軽だから読むという人が増えてくると、だんだん漫画の質が下がっていくんじゃないかと思うんです。質の良い漫画の読者を広げていくことに対して、何かお考えはありますか?

鳥嶋: 全部の漫画を良くすればいいんだよね。どれを読んでもいいとなればいいんです。今、無料で読める漫画は、「無料だからこれぐらいでいいだろう」となっているから問題なので。全部の漫画がちゃんとしたレベルになっていれば、どれを読んでもいいんですよ。

 いろんなことの疑問があった時に、僕はいつも立ち戻るんですけど、やっぱり最終的には「面白いものを作る」。これしかないんじゃないですか。全ての解決策はここに戻りますよ。面白いものを作ってそれで埋める。これしかないです。残念ながら。

photo (写真提供:文化学園大学 深田 雅子)

――今、『ドラゴンボール』ってすごく盛り上がっていると思うんです。新作映画があったりとか、ゲームがあったりとか。そんな今の『ドラゴンボール』を見て、鳥嶋さん個人として何か思うところはありますか?

鳥嶋: 東映アニメーションやバンダイナムコは本当に儲かってるよね。お金の使い道がないって言ってるぐらいだから(笑)。さっきも言いましたけど、僕は日本の漫画・アニメ・ゲームに関わる経営者のレベルの低さに、非常にガッカリしています。

 どういうことかというと、漫画・アニメ・ゲームで儲かっている全てのお金は、子どもおよび読者、ユーザーのお金なんですね。ということは、これで儲かったお金は市場に返す義務があると、僕は思うんです。つまり、漫画の土壌がないところには漫画の文化が続かないのと同じように、漫画・アニメ・ゲームで儲かったら、次の世代の発見・育成、市場作り・土壌作りにどういうふうにお金を出すかということだと思うんです。

 ここに関して残念ながら、日本の経営者には哲学がない。市場に返すという気持ちがない。だからダメです。だからおそらく、三代で会社がダメになるでしょうね、みんな。本当にちゃんとした経営なら、未来・才能に対してどう投資するかを考える。これしかないと思うんです。

 漫画だったら鳥山(明)さんみたいになりたい。アニメだったら庵野(秀明)さんみたいになりたい。ゲームだったら堀井(雄二)さんや坂口(博信)さんみたいになりたいと思っている若いクリエイターが、「なって良かった」と思える。そういうバトンタッチがいい形でできるかどうか。この環境を整えられるかどうかだと思うんですよ。このためにお金を返せるかどうか。ここだと思います。

 そういう意味で僕は、東映アニメーションとバンダイナムコが『ドラゴンボール』で儲かったお金を、漫画・アニメ・ゲームに投下してくれることを願っています。関わる人たちにはそうやって言っていますが、はたしてどこまで響いているかどうか。

photo 『ドラゴンボール』で儲かったお金を、漫画・アニメ・ゲームに投下すべきだ(鳥山明さん、Wikipediaより)

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