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» 2019年07月22日 05時00分 公開

マシリトが行く!:『ジャンプ』伝説の編集長が語る「21世紀のマンガ戦略」【後編】 (8/8)

[伊藤誠之介,ITmedia]
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今、集英社にいたなら、子ども向けの『少年ジャンプ』を作って無料で配る

――紙の時代はいつまで続くと思いますか。特に雑誌は。

鳥嶋: なくならないとは思いますが、雑誌を読む世代の年齢がだんだん上がってきているので、そういう人たちがいなくなると、一気に需要がなくなりますから。もう一回、紙じゃなきゃいけない雑誌の編集の仕方、記事の載せ方、そういうものが問われると思います。

 簡単に言うと、紙質・書体・写真・文章・デザイン。もう一回、「ちゃんと組み合わせて作られているか」という原点に戻るんじゃないですか。ちょうど映画会社が一回、映画がTVにやられて終わったと言われたけれど、今は逆に映画がもう一回メディアとして出てきて、TVが時代遅れになりつつある。だからやっぱり、ちゃんとしたものを考えてソフトとして作れば、それは生き残っていくんじゃないかと思います。

 そういう意味で言うと「雑誌は終わり」ではなくて、「いいかげんに作っている雑誌は終わりつつある」ってことだと思います。

――これからの時代に、子ども向けの作品がどういうメディアで展開されるのでしょうか。雑誌が死んだとしても、子ども向けの作品は潜在的に需要があるわけですから。

鳥嶋: たった1つです。良いものを無料(タダ)で見せる。僕が今、集英社にいたとしたら、子ども向けの『少年ジャンプ』を作って無料で配ります。

――鳥嶋さんのお考えとして、無料の場所からはプロフェッショナリズムは生まれないのではないですか?

鳥嶋: だから、そのあとどう回収するか、ちゃんと考えておきます。

――そこが具体的にどういうふうになるか、イメージはありますか?

鳥嶋: だから知ってもらわないことには、全てが始まらないわけですよね。知ってもらうということは、読者に伝わるということですから。無料のものが溢(あふ)れているなかで値段をつけるというのは、非常に困難なので。

 電子コミックと同じように、最初の1巻、2巻は無料で見せて、その後はどうこうとか。あざといですけど、そういうやり方も含めて、最初にどう導入するか。そのためにはいろんなテクニックを組み合わせて、子どもにいいものを無料で見せるということを、今、やらざるを得ないんじゃないかと思います。本意ではないけど。

――儲(もう)かるかどうかはチャレンジだけど、面白そうな作品であればいったん育ててみて、回収は後々で、といったイメージですか?

鳥嶋: それが面白い、それが友達だ、それがなきゃつまらない、ということになったら、多少のお金を出しても手に入れたいと思うはずです。人間には欲望がありますから。それをいかにあざとくなく、スムーズに行うか、ということじゃないですか。

 あとはやっぱり、子どもは大人と違って本当にお金が少なくて、不自由なので、それと接している間はある種の気分転換ができる、そういう励ましの仕方とか、コンテンツの作り方をしてあげたいと思いますね。児童虐待や学校のイジメを見ると、本当に胸が痛みますから、僕は。

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――新人作家を発掘する時に、いちばん気を付けていることや、新人のこういうところを見ているというのは?

鳥嶋: 新人作家にいちばん気を付けているのは、才能の見極めを早くして、ダメな人には早めにダメだと知ってもらうこと。そうしないと人生のムダづかいになる。これだ、と思う人には、作業の中でできるだけ早く、自分の良さを知ってもらう。その2つですね。

原田: それではすみませんが、質問のほうはこのあたりで。最後に鳥嶋さんから、編集者志望の学生さんもここにいますので、そういう方たちに向けて何か一言お願いします。

鳥嶋: 編集者になるための特別な才能は、必要ないと思うんですね。編集者として大事なことは、「ここに面白い人がいる」「この人はなんでこんなことを考えているんだろう」というのを誰かにぜひ知ってほしいと思う、この興味の持ち方と、紹介したいという熱意かな。これが大事だと思います。これが編集者ですから。自分自身は何もできないからこそ、誰かの才能を評価できる。ここをやっぱり心掛けてほしい。そういう意味で好奇心を持ち続けてほしい。

 あともう1つは、いろんなことを棚に上げないこと。例えば、何か企画がある時に「読者が分からない」「設定が分からない」と言うんだけど、どんな読者でも、僕らと同じ時代を生きているんです。ということは、僕らが朝起きてから寝るまで、どういうふうに生活して、どういうふうにメディアに接するかを考えれば、答えの半分は出てくるんですね。想像力があれば、広告代理店に頼らなくてもマーケティングはできるわけです。

 だから常に自分と他人を見続けて、「なぜなのか」を考え続けてほしい。この2つができれば、編集者になれると思います。がんばってください。(了)

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photo 文化学園大学のキャンパス。ファッション学科などもあり、さまざまな格好をした学生が歩いていた
photo 鳥嶋さんは、電ファミニコゲーマーの平信一編集長が7月に立ち上げた、マンガ・アニメ・ゲーム専門のファンクラブ「世界征服大作戦」においても、”押しかけアドバイザー(相談役)”を務めており、現在進行形で業界の発展に寄与している
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