吉本興業がテレビ業界から干される日専門家のイロメガネ(2/7 ページ)

» 2019年08月02日 07時12分 公開
[中嶋よしふみITmedia]

テレビ局各局が「反吉本」へと動いた

 吉本を今後も野放しにするならば、最大の取引先で大株主でもあるテレビ局各局は、道義的な責任という曖昧な話で済まないことは、『テレビ局が吉本興業を出入り禁止にすべき理由』で指摘した。問題は、芸人個人の責任がうんぬんという次元から、すでに事務所、テレビ局へと移行している。

 会見のしばらく前、7月の第一週にはNHK、TBS、フジテレビ、テレビ朝日、テレビ東京と、各局のトップが定例記者会見で、視聴者やスポンサーへの謝罪、今後の対応、再発防止の申し入れなどを多少トーンの違いはあれど説明している(参照・各テレビ局トップが次々と「遺憾の意」…闇営業問題、吉本興業の会見は一体いつ? スポーツ報知 2019年07月6日)。

 そして7月29日、会見後に行われた日本テレビの定例記者会見では、「第三者委員会を設置しての早急な事実確認」「反社会的勢力との関係を遮断する具体的な施策の公表」「企業のガバナンスを徹底する方策の開示」など三点を書面で申し入れ、なおかつ文書での回答を求めたという(参照・引用 日テレ、吉本に事実関係の確認などを求める申し入れ書…社長定例会見 スポーツ報知 2019月7日30日)。

 謝罪会見の前よりも、あきらかにトーンが一段階上がっている。会見によってかえってトラブルが拡大したことで、局側が経営陣の資質を問題視したことの現れだろう。

(写真提供:ゲッティイメージズ)

 吉本抜きでテレビは成り立たない、といった見方も当初一部であったが、もはやそのような段階ではない。「テレビ局が株主だから大丈夫」発言で広く知られるようになったが、大株主であるテレビ局10社の持ち株を合わせると、吉本の議決権の半数近くになる。つまりテレビ各局が結束すれば、吉本は「テレビ業界の子会社」となり、経営陣の刷新すら容易にできる状況だ。

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