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ジャニーズという「努力の天才たち」から学んだ仕事哲学ジャニーズは努力が9割【前編】(3/4 ページ)

» 2019年08月16日 05時00分 公開
[霜田明寛ITmedia]
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蜷川幸雄「何でジャニーズの方が努力してんだよ!」

 ジャニーズは努力によって特別になっていった人たちである――。

 それは岡本さんの背中から教わった、偉大な真実でした。そして、この真実を直視することは、僕の人生観を一変させました。それは、絶望でもあり、希望でもありました。

 それまでは、ジャニーズを恵まれたルックスをもって生まれた人たちの集団だと思っていました。おそらく、多くの人が同じようなまなざしでジャニーズを見つめていることと思います。彼らは運良くイケているルックスで生まれ、運良くジャニーズに選ばれ、運良く人気を得ている「特別な星のもとに生まれた、選ばれし人たちなのだ」と。

 彼らの活躍の裏には不断の努力や思考の重なりがあります。しかし、ファンでありながらも僕は、それを直視せず、見て見ぬふりをしてきたのでした。

 なぜならば、「彼らと自分は生まれた星が違うのだ」と思い込む方が、楽だったから。しかし、現実は違いました。彼らもまた「普通の星のもとに生まれた、普通の人たち」だったのです。ですが、彼らはそこから努力を重ね、一方で自分は努力を怠っていた。その差が、そのまま人生の差になっている。それを見つめることは苦しくもありました。

 舞台演出家・蜷川幸雄に密着したNHKのドキュメンタリーで、こんなシーンがありました。蜷川幸雄は、自分の劇団に所属する、まだ売れていない若手の舞台俳優たちにこうげきを飛ばします。

 「何でジャニーズの方が努力してんだよ! お前らより売れてる奴らがよ! 全然説得力ねえよ!」

 ジャニーズたちの人生に目を向けると、自分の人生こそ説得力がないものだ、ということを自覚しなくてはいけない――それが絶望の理由です。

 しかし一方で、岡本さんの言葉は、希望でもありました。「この世界は、努力すればなんとかなる希望の世界である」と教えてもらったような気がするからです。それは、一見すると、芸能界のような才能のみで決まるように見える世界ですら同じなのだ、と。

 “普通の星”に生まれた人たちが、特別なことを成し遂げるまでの進化の過程をつぶさに見ていけば、同じく“普通の星”に生まれた何者でもない自分にも、何か特別なことを成し遂げられる道筋を示してくれる気がしました。それは絶望の後に差し込んだ、一筋の希望の光でもありました。そこにこそ、人生を変えるヒントが詰まっているはずだ、と。

 岡本健一さんに「努力できる?」と問われてから約15年、ジャニーズがどんな努力や工夫をこらして、自分の人生を歩んできたのかを見つめ、調べてまとめたのが本書です。

 共通していたのは、もともと特別な星のもとに生まれた人なんていないんだ、ということ。普通の人が特別なことを成し遂げるための道は、確実に存在するということ。そして、その道は1本ではなく、無数に存在しているということ。活躍の仕方が十人十色なら、そこまでの努力の仕方も十人十色です。

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