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テレワークを取り巻く国内外の最新事情特集・日本を変えるテレワーク(3/3 ページ)

» 2019年08月27日 07時00分 公開
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テレワークにおける課題と生産性向上

 かつては実験的な試みでしかなかったテレワークが、技術革新と企業、そして人々の意識変革で社会インフラの一部となったのは興味深い。一方で、考えられる課題もある。

 1つはセキュリティの問題で、企業の機密情報を持ち歩いて外で作業することは情報漏えいのリスクにつながる。かつてはPCなどのデバイス盗難がその中心だったが、「在宅作業するためにUSBメモリにデータをコピーして持ち帰ったらカバンごと紛失した」「作業中の情報を画面を通じてのぞき見られる」「音声ミーティングを通じて打ち合わせの内容がバレる」「作業中の情報が含まれたスマートフォンやタブレットを落とした」といったことは現実に起きている。どこでもデバイスや情報を簡単に持ち出せて、好きな場所で作業できるようになったゆえの問題だ。それぞれに技術対策はあるものの、結局は個々人が注意することで防ぐべき事柄でもある。

 攻撃の高度化もある。屋外作業時に正体の明らかではないWi-Fiホットスポットを用いることで情報を盗まれたり、何らかの形でマルウェアを仕掛けられたりと、攻撃の起点にされる危険性がある。また、適切な暗号化を施していないWi-Fi通信の場合、その内容が第三者に盗み見られる危険もある。いずれにせよ、必要十分なセキュリティ対策を施しつつ、安全だと判断できない場所でのWi-Fiや通信ケーブルの利用は控えるべきだろう。

 テレワークを許容する企業側も、「重要な情報はローカルに保存させない」「情報のアクセス権限をきちんと管理し、監査を実施する」「デバイス紛失時の対処や情報管理ポリシーをきちんと設定する」といった形で対処する必要がある。

 アクセス権限の制御はWindowsなどでよく利用されており、例えばMicrosoftのIntuneでは監査ログを含めて情報へのアクセス状況のレポートを適時まとめることができ、トラブル時の対応が迅速に行える。情報漏えい策と同時に、漏えい後の対処まで含めて整備しておくことが重要だ。

 いずれにせよ、これだけ技術や環境が整いつつあるなかで、生産性を向上させるツールを活用しない手はない。情報漏えいなどセキュリティにおけるマイナス面だけに目を向けず、いかに従業員の生産性を向上させるかに目を向けるべきだろう。

 さらに高齢者や子育てから復帰した人々、配偶者の転勤により本社への常勤が難しい人、介護など何らかの理由で働ける時間に制限がある人など、今後の労働力減少時代において活用したいリソースは数多くあり、テレワークはこうしたものを取り込む可能性を秘めている。

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