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» 2019年09月04日 07時00分 公開

【対談】留目真伸氏×本田哲也氏(後編):変化の時代のチームの形は「映画スタジオ」 新規事業作りに必要な“名脇役”とは (1/5)

新産業の創出に取り組む留目真伸氏と、PRの専門家として活躍する本田哲也氏が「変化の時代のチーム作り」について語る対談後編。柔軟な組織やチームで課題を解決するために、企業や個人はどんなことができるのか。

[柴田克己,ITmedia]

 元レノボ・ジャパン代表取締役で、現在は新産業の創出に取り組む留目真伸氏とPRの専門家として活躍する本田哲也氏が「変化の時代のチーム作り」について語る本対談。前編では、日本企業が変化への柔軟な対応を苦手としている根本的な原因について語ってもらった。後編となる今回は、そうした現状を打破するために、企業や個人ができることについて聞く。

留目真伸(とどめ・まさのぶ)

SUNDRED株式会社 代表取締役、株式会社HIZZLE ファウンダー/代表取締役、VAIO株式会社 Chief Innovation Officer。早稲田大学卒業後、総合商社、戦略コンサルティング、外資系ITを経てレノボ・ジャパンに入社。2015年4月より同社とNECパーソナルコンピュータの代表取締役社長。2018年4月HIZZLEを創業。その後、資生堂のチーフストラテジーオフィサーを経て2019年7月にSUNDREDの代表取締役に就任。2019年8月にVAIOのChief Innovation Officerに就任。

本田哲也(ほんだ・てつや)

「世界でもっとも影響力のあるPRプロフェッショナル300人」にPRWEEK誌によって選出された日本を代表するPR専門家。世界的なアワード『PRWeek Awards 2015』にて「PR Professional of the Year」を受賞している。セガの海外事業部を経て、1999年に世界最大規模のPR会社フライシュマン・ヒラードの日本法人に入社。2006年、スピンオフのかたちでブルーカレント・ジャパンを設立し代表に就任。2009年に「戦略PR」(アスキー新書)を上梓し、マーケティング業界にPRブームを巻き起こす。P&G、花王、ユニリーバ、アディダス、サントリー、トヨタ、資生堂など国内外の企業との実績多数。2019年より、株式会社本田事務所としての活動を開始。著書に「戦略PR 世の中を動かす新しい6つの法則」(ディスカヴァー・トゥエンティワン)などがある。

photo 留目真伸氏

留目: 日本企業の現状についてはかなり悲観的な話になってしまったのですが、そこで働く個人については、実は、希望があると思っているんです。不思議なことに、ひとりひとりは、まったく考える力を失っていないんですね。

 近年、会社を離れたビジネスコミュニティで、テーマを設定したアイデアソンやディスカッションなどを見る機会が多いのですが、その場に集っている人たちは、それぞれに課題意識やアイデアを持っていて、非常に優秀なんです。

本田: そうですね。そうした人たちは、コミュニティの場では非常に目を輝かせて、アイデアを出し、議論ができるのに、なぜか会社に戻ると目が死んでしまう(笑)。会社に夢を持てなくなっているのかもしれません。

留目: 会社という「共同体」の意識が、新しいことをやりたい個人の足をひっぱるという側面はあるでしょうね。そもそも、私自身、社長の立場で新規事業の立ち上げを手がけましたが、社長が自ら動いたとしても、会社の中でそれをやるというのは大変でした。

 今、企業がやろうとしている新規事業の多くは「新産業作り」なんですよ。それは、これまで自社が作って維持してきたものとは、全く違う価値観を提供する事業を作ることに他ならない。ですが、そんなことをやっていると、会社の中で「変人」や「要注意人物」と見なされてしまうんですよね。組織でそうした評価や抵抗を受けると、全力で取り組むのは難しくなってしまう。

本田: 前時代的な共同体意識で変化を防ごうとする力が働いてしまうのはつらいですね。

 個人にとって、会社をはじめ「どんなコミュニティに属しているか」は、アイデンティティーの一部だと思うのですが、所属先への考え方はこの数十年で大きく変わったと思っています。昔は「どこの企業に勤めているか」がその大半を占めていて、同じ企業に所属している人は、ビジョンやカルチャーといった同じ価値観を共有できていた。でも、今は会社以外にもビジネス関連のコミュニティやサロン、SNSなど、所属できるところが多様化している。個人にとって、魅力的な価値観が社外に広く分散している状況です。

 そうした価値観に共感している人は、古い共同体意識に居心地の悪さをおぼえますよね。だから、会社に戻ると死んだ魚の目になってしまう(笑)。経営者でも、この状況に気付いている人ほど、副業や社外でのコミュニティ活動を推奨しているように思います。

留目: 実際、経営者の中にも、社外のコミュニティに参加したり、人脈作りに積極的に取り組んだりする人は出てきています。でも、経営者が個人的に気付いて、それを推奨したとしても、なかなか会社全体が変わるところまではたどり着けないんです。

 例えば、私はレノボ・ジャパンにいた頃、「無制限テレワーク」のような制度を導入しました。場所にも時間にも縛りのないテレワーク制度で、これをフル活用して外に出て人脈を作り、事業に生かしてほしいと考えていたのですが、それでも多くの人は会社に来てしまっていたんです。

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