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» 2019年09月20日 07時15分 公開

専門家のイロメガネ:なぜデンマークは、消費税が25%でも軽減税率を導入しないのか (2/8)

[中嶋よしふみ,ITmedia]

デンマークが軽減税率を導入しない5つの理由

 デンマークはEUの中でも小国の部類になる。

 面積は日本でいえば関東(一都六県)より少し広い程度、人口は600万人程度で千葉県より少ない。一方で豊かさの度合いとしても使われる、一人当たりの名目GDPは18年時点で6万ドル超で日本の約1.5倍、世界ランキングでは10位と豊かな国だ。先進国では最低水準に近い日本の26位と比べてもその差は際立つ。(参照・IMF World Economic Outlook Database, April 2019)

 国土交通省の作成した資料でも、「高い所得水準と国際競争力 」「幸福度世界1位の高福祉国家」「国民の能力を活用・向上する仕組み」「高い所得水準・国際競争力・特色ある産業発展」と、べた褒めされている(参照・デンマークの経済社会について 国土交通省 国土政策局 平成26年4月)。

 さまざまな面で条件は異なるが、EU各国が軽減税率を導入する一方で、デンマークが導入しない理由は極めて明解で合理的だ。そしてその理由を日本のデンマーク大使館はFacebookで以下のように5つ、挙げている。

(1)徴税コストを抑制する

(2)軽減税率の適用対象品目の峻別(しゅんべつ)が困難である

(3)税の歪(ゆが)みを抑制する

(4)高所得者は食料品に対しても相応の支出を行うため高所得者の方が軽減税率による負担軽減額が多くなる

(5)低所得者への配慮は社会保障給付によって行う方が効率的である

なお、慈善活動や文化活動、非営利活動などにより提供されるサービスなどは非課税となっています。

デンマーク大使館 フェイスブック公式アカウントより抜粋 2015/09/09

 詳しく説明する前にざっくりと整理すると、軽減税率は徴税コストが高く、線引きに手間がかかり、脱法行為を生み出しかねず、高所得者に有利。だから軽減税率よりも別の手段で還元した方が好ましい、ということになる。デンマークは軽減税率そのものを完全に否定している。

 1〜4はすでに指摘したような、これから日本でも起きる問題を避けるためだ。

 1の徴税コストは、税率が商品や販売方法によって異なれば複雑になり、正確に事業者が消費税を受け取って納めているか確認する必要がある。国税庁は軽減税率の開始にあたって大量の資料やガイドラインを出しているが、軽減税率がなければこれらは一切不要だ。そもそもEUで軽減税率は、標準税率(通常の消費税)が15%以上と高い水準でなければ設定できないことになっている。

 そして日本のように、たった2%しか差をつけていない国もほとんどない。多くの国が10%以上の差を付けている。それだけ差を付けなければ、わざわざ手間とコストをかけてまで軽減税率を設ける意味がないからだ。ここでいうコストは税務署と企業側のコスト両方だ。

 主に軽減税率が適用される飲食業、小売業の利益率は大手企業であっても2%とか3%という低い水準であることも珍しくない。このような薄い利益が軽減税率の対応で削り取られることになる。近いうちに「軽減税率倒産」が出てもおかしくないレベルだ。

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