クルマはどう進化する? 新車から読み解く業界動向

ダメなカローラと良いカローラ池田直渡「週刊モータージャーナル」(4/6 ページ)

» 2019年10月07日 07時00分 公開
[池田直渡ITmedia]

 カローラ・スポーツはそういう意味では良くも悪くも素直で、アンジュレーションでチョロチョロするクセがあった。曲がることを得意とするシャシーと考えるのならば、それは青筋立てて非難するほどの欠点ではなかったが、東京から名古屋までカローラ・スポーツで行けといわれたら、ちょっとそのクセが頭をよぎる程度には嫌だった。

 今回の刷新で、それが見事に直った。セダンとツーリングだけでなく、ハッチバックのスポーツも今回手を加えられて、「ズン」と真っ直ぐ走るようになったのである。

 何をやったのかと聞けば、前後のピッチングのタイミングを調整していったのだという。目的はドライバーが感じる車両の動き、特に目視情報とクルマの動きを揃えてやること。具体的にはダンパーの減衰レートを下げる方向で前後のバランスを取り直した。

 それでなぜ直進安定性が上がったのかといえば、おそらくは、その補正のおかげでアンジュレーションで横力が発生する瞬間に、タイミング良く舵を当てられるようになったのだと思われる。真っ直ぐ走るというと、何もしないでただ直進するのだと思うかもしれない。しかし直進安定性は、路面や風といった外乱に常時乱される進路を、いかに早期かつ少量かつ短時間で補正できるかに掛かっていて、実質的には微少なコーナリングの連続なのだ。

 その結果、カローラは、セダンもツーリングもスポーツもみな真っ直ぐ走るクルマに仕上がっていた。過去1年にカローラ・スポーツを買った人は少々気の毒だと思うが、技術の進歩とはそういうものなので仕方がない。

ワゴンもハッチバックもリヤドアは樹脂を採用。軽量化と共に、金属では難しい造形が可能になった

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