堀江: ただ、日本の国民皆保険は一枚岩ではありません。国民健康保険があって、協会けんぽがあって、各業種ごとに健康保険組合があります。国が号令をかけても、みんなバラバラに対応しますよね。
われわれも協会で、大腸がんの予防キャンペーンをやりました。大腸がんは日本でやっと最近減り始めたみたいですけど、韓国やアメリカは大腸がんの罹患率が劇的に減っています。その理由は、前癌(がん)病変というがんになる前の段階でポリープを切除するからです。
ポリープを切除すれば、ほぼ大腸がんにならないことが分かっているので、アメリカでは大腸内視鏡を定期的に受けた場合、保険料を安くしています。がんになった場合に比べれば、明らかに保険金の支払いが減りますから、保険会社にとってはものすごいインセンティブですね。
一方の韓国は、健康保険の制度が日本と違って一枚岩だそうです。だから国が号令を出したらみんな動きます。日本の場合は、それが全部複雑な構成になっていて、そこも問題だと思っています。
三輪: 日本の場合は、国が動いても変わらないということですか。
堀江: 国が動いても駄目。健康保険組合がたくさんあって、それぞれ経営状況が全然違うから。例えば協会けんぽはめちゃくちゃ赤字です。中小企業がたくさん集まった団体なので。それに組合員が高齢化して、どんどん病気になっています。その一方で、僕も入っていましたけども、関東ITソフトウェア健康保険組合はめちゃめちゃリッチなんですよ。
金子: あそこはすごいですよね。寿司(すし)屋の補助とかまでありますものね。
堀江: そうそう。赤坂に関東IT健保のビルがあって、健保組合員はそこの超おいしい寿司が安く食べられます。年に2回くらい、薬のセットも送られてきます。しかも保険料が安いです。
三輪: すごい。そんなメリットがあるんですか。
金子: 若い人しか加入していないですよね。
堀江: 平均年齢はたぶん30代だと思います。健康保険組合は業種によってこれだけ違いますから、ここをハックするのは困難です。予防した方がインセンティブが高まる設計にするのは、日本では非常に難しいと思っています。
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