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陸上の日本記録保持者・為末大がパラリンピックを支援する理由連載「パラリンピックで日本が変わる」(5/6 ページ)

» 2019年10月15日 08時00分 公開
[田中圭太郎ITmedia]
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企業とパラリンピックの関わりはどうあるべきか

――東京2020大会は、企業がスポンサーになる場合、オリンピックとパラリンピックの両方を支援することになりました。これも初めての試みですが、為末さんもスポーツを支援する企業や団体を運営するなかで、企業はパラリンピックにどう関わっていくのが望ましいと考えていますか。

 現在企業が行っている支援は、結局、パラリンピアンを雇用することと、自社の広告に採用することの2点だけしかないのではないでしょうか。

 雇用については、民間企業では全従業員のうち、障害のある人を2.2%以上雇うことが障害者雇用促進法で定められています。定められた雇用率以上に雇った場合は調整金がもらえるので、インセンティブにもなっていると思います。

 でも本質的には、企業が本気で(障害の有無や能力差などを問わずに利用できることを目指した)ユニバーサルデザインに取り組んだ方が新たな可能性がけると思いますね。障害のある人の多くはアクティブではないですが、パラリンピアンはすごくアクティブで、発信力もあります。だからこそ、パラリンピアンが感じている障壁を、企業が1つ1つ自分たちのビジネスで改善できれば、一歩先の未来を見据えた、高齢化社会のためのプロダクトを生み出せるのではないでしょうか。

 逆に、これまでの大会に比べて国や企業の支援が厚いために、気になっていることもあります。これは僕がパラリンピアンと関係ができているのであえて言いますが、パラリンピアンと話していて、「それはちょっと都合がよすぎるのでは」と感じることもあります。

 いまは東京2020に向けてブームが来ていて、パラリンピアンの支援もバブルのような状態になっています。バブルを1回経験すると、はじけたときに不満だらけになってしまうので、バブルの状態は選手にとってはあまりいいことではありません。若い選手には「この条件はお前の実力とはすごく乖離しているからな」としきりに注意しています。

 そういう意味では、選手の側からは単に楽をするための支援ではなくて、パフォーマンスを出すために必要な支援を働きかけていくことが大事だと思っています。

phot 東京ガスが支援しているパラリンピック水泳の木村敬一選手

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