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» 2019年10月17日 08時00分 公開

躍進する高級車ブランド「LEXUS」:レクサスインターナショナルの澤プレジデントが語る「ブランドにひもづいたデザイン」戦略 (1/3)

人から愛されるブランドをどのように作るか。高級車「LEXUS」を成功させたレクサスインターナショナルの澤 良宏プレジデント(トヨタ執行役員)に話を聞いた。

[林信行,ITmedia]

 イノベーションは必ずしも技術によって生み出されるわけではなく、デザインが生み出すものだ。

 例えば、iPodは決して世界初のデジタル音楽プレーヤーではなかったが、人々の生活を変え、心躍らせるビジョンを、うまく既存技術を組み合わせることで形に変え成功した。その後に続いたiPhoneも、決して世界初のスマートフォンでもなければ、世界初のタッチパネル式携帯電話でもないが、その技術に支えられた優れたデザインで世界を征した。同様に掃除機でおなじみのダイソンも、掃除機やドライヤーなどの既存製品が抱えていた課題を解決する「デザインエンジニアリング」で成功している。

 しかし、日本は世界に誇れる優秀な工業デザイナーが大勢いるにもかかわらず、いまだに技術だけで勝負をしている企業が多い。

 一定評価を築いたソニーを除くと、なかなかデザインを戦略の中心に据えた企業が出てこないのが現状に見える。だが、実は日本にも技術に裏打ちされたデザインに注力して大きな成果を出しているブランドがある。自動車ブランドの「LEXUS」だ。

LS500h version L

躍進をつづけるLEXUS、その背後にはデザイン重視の戦略

 レクサスインターナショナルが7月に発表した2019年上半期の欧州新車販売の総台数は4万450台。前年同期比は5%増と、不振の自動車業界にあって2年連続で前年実績を上回っている。18年、それまで好調だった自動車消費市場はマイナス成長に入り、19年はさらに悪化。5月時点での販売台数を前年同期と比べると16.4%も減少している(中国自動車工業協会調べ)。しかし、同じ18年と19年5月の販売台位数比較で、150%増と販売台数を大幅に伸ばしているのがレクサスだ。

 18年の国内登録台数は5万5000台。メルセデスベンツの6万8000台には及ばないが、BMWの5万1000台は抜いており、同年累積出荷台数でも50万台を超えている。実際に街を歩いていてもLEXUSの姿をよく見かけるようになった。昨今の日本では軽自動車など価格重視の車が人気の中、海外市場を見てデザインされた(ほとんど値引きのない)高級車をこれだけ販売しているのは驚きだ。

 この成功の背景には、数々のスポーツイベントやアートイベントのスポンサー、表参道のINTERSECT BY LEXUS、東京ミッドタウン日比谷のLEXUS meets...といったカフェやショップの展開、それらの場で日本の上質な匠の技をキュレーションし、販売するレクサスの試みがある。全国の地方で突然開かれる食事会「DINING OUT」を展開したかと思ったら、東京ミッドタウン六本木の広場でグランピング体験を展開したりと、現代のライフスタイルを提案するさまざまなイベントを通して、すっかりブランドとしても親しみが持てるようになったことも大きい。

 だが、それだけでは製品を所有しようという思いまでには至らない。やはり、何と言っても大きいのは細部までこだわり抜いた製品のデザインだろう。

 12年、LEXUSはそれまでとは大きく方向転換し、車の顔ともいえる正面に、存在感の強い「スピンドルグリル」と呼ばれるデザインを採用して衝撃を与えた。

 当初は、あまりに個性の強い“顔”に拒否反応を示す人や酷評する人も多かった。しかし、今ではこれがすっかりおなじみとなり、スピンドルグリルを街で見かける頻度から、LEXUSが増えているのを実感しているのではないだろうか。iPodが大成功したときに、白いヘッドフォンを身に着ける人が急速に増えるのを見ながら、その勢いを実感したのと同じように。

 製品発表時に違和感の声があがるのはLEXUSだけではない。例えば、iPhoneも形状変更があるたび、あるいはAirPodsなどの新製品が出るたびに、その見た目の意外性からネット上で「違和感」の声があがる。しかし、市場ではすぐに市民権を得て、それが当たり前になる。シンプルなようで、実際には立体的で非常に複雑な形状をしたスピンドルグリルにも、そこに通じるものがあるのかもしれない。

 このスピンドルグリルのLEXUSが開発されていたときに、LEXUSのグローバルデザイン統括部部長に就いていたのが澤良宏氏、現在のレクサスインターナショナルのプレジデントである(トヨタの執行役員も兼任)。そう、レクサスではデザイン畑出身の人物がトップに立ち、この大成功をけん引してきたのだ。

 現代はテクノロジーの時代といわれる。裏を返せば、新興の会社であろうとも、同じようなテクノロジーを用いた同じような製品を簡単に作ることができる時代でもある。しかし、こと製造業においては、テクノロジー以上に、デザインの力を持つブランドが成功している。Appleやダイソンはその代表例だが、LEXUSもそうしたブランドの1つとして数えていいのではないだろうか。

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