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レクサスインターナショナルの澤プレジデントが語る「ブランドにひもづいたデザイン」戦略躍進する高級車ブランド「LEXUS」(3/3 ページ)

» 2019年10月17日 08時00分 公開
[林信行ITmedia]
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LEXUSは車ではなくライフスタイルを売るブランド

 それにしても、LEXUSはどうしてこんな展示方法を選んだのか。

 「これでも、今年からは、これまでのミラノデザインウィークで行った展示とは変えて、かなり説明っぽい展示にした」と澤氏は笑う。

 今では多くの自動車会社が出展するミラノデザインウィークだが、その中でもLEXUSは自動車ブランドとして真っ先に出展し、19年で参加12回目を数える。筆者もそのうち半分ほどを見てきたが、初期は「L-finess」というLEXUS車のデザインコンセプトを吉岡徳仁やnendoといった人気の若手デザイナーと組んで行う展示が中心だった。

 そして澤氏がデザイン部門の長にたったころから、少し展示内容が変化し、気鋭の建築家による巨大な建造物が披露されたり、有名シェフを招いて“五感に訴えかける展示”が行われ、大きな話題となった。また、MIT MediaLabとのコラボレーションなど、もはや車そのものを感じさせない「体験」を見せる展示が中心になっていた。

 しかし、19年はまた少し方向性を変えて「未来をサジェストした展示。未来に対してつながりを感じられる展示にしたかった」と澤氏は説明する。そんな澤氏にミラノデザインウィーク出展の意義も聞いてみた。

 「自動車向けの展示会で、ただ自動車を並べて見せる、というやり方は最近ではお客さまの方も納得しなくなっている。そうした中で、どんなイベントに出展するのか、そしてどう見せるかは、おそらく他の自動車メーカーも悩んでいるところだと思う。ミラノデザインウィークは、世界でも最もデザイン系の感度が高い人が集まってくる特別なイベント。この1週間、これだけデザイン系の感度が高い人たちが集まり、またこれだけ素晴らしいデザインの作品がそろい、来場者の感度が冴え切っているところで、自分たちができる最高のチャレンジを示せば、来る人たちもそれを肌で感じてくれると思う。そしてこれまで個別に提示していたいろいろなことがリンクし始めて、そこからブランド全体としてのオーラ(人や物が発する雰囲気)のようなものを感じてもらえるのではないか」(澤氏)

 最新型のLEXUSを見渡したとき、ヘッドライトは小さなパーツの1つでしかない。しかし、そんな小さなパーツの1つにまで、Human-Centerdの哲学があり、ミラノで大勢の来場者を感動させたパフォーマンスの物語がある。これがLEXUSの強みだと筆者は思う。同じヘッドライトをただ開発し、技術的な原理を説明したところで、頭で納得するのはその瞬間だけだ。これに対して、たった1つの部品の裏にも、これだけのストーリーがあると、何かふとした拍子にそれを思い出し、心を満たされる部分がある。

 LEXUSのブランドに結びついたデザインの価値というのは、まさにそんなところにあるのだろう。ちなみに、LEXUSにおけるデザインへの取り組みはこれだけではない。実はミラノデザインウィークの展示には、もう1つ隠れた展示部屋があり、それこそがLEXUSの未来を作っているのだが、それについては後編で紹介したい。

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