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「アニメの絵を自動で描く」AIが出現――アニメーターの仕事は奪われるのか?ジャーナリスト数土直志 激動のアニメビジネスを斬る(5/5 ページ)

» 2019年10月21日 08時00分 公開
[数土直志ITmedia]
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アニメの感動に必要なのは「AIにない創造性」

 アニメ制作の自動化は、単に作業を効率化させるだけでは不十分である。アニメを作るシステムも同時に変える必要がある。技術が変わるからシステムも変える必要があるのか、システムを変えるために技術を導入するのか。恐らくは同時並行だろう。そしてさらに現場スタッフの理解も必要になる。

 そして最後の鍵がクリエイティブ(創造性)だ。クリエイティブ自体はAIのような自動化のシステムだけでは生み出すことができない。そしてアニメーションは、そもそも創造性を基盤とした表現である。単に絵を動かすだけでなく、現実には存在しないキャラクターやメカニック、美術、アニメーションの動き、演出、世界観も全てゼロから生み出す創造性こそが作品の基盤にある。

 米国アカデミー賞は、アニメーション部門のエントリー条件として、「人間自らが生み出した絵の動き」を挙げている。手描きのアニメーションだけでなく、CGでも動きのタイミングをアニメーターが創造したものはアニメーションとみなしている。逆に言えば、「システムによって自動生成された絵の動き」はアニメーションに含まれない。「アニメーション=動きの創造」だからである。

 今後もAIを使った物、使わない物も含めて、アニメ制作の自動化への挑戦は増えそうだ。原画、動画、背景美術、あるいはデザインの一部さえ自動化されていくかもしれない。CG技術が進歩すればなおさらだ。

 しかし重要な点は、創造性(=クリエイティブ)だけは自動化できないことだ。かつての名アニメーターの技術を再現はできても、そこからは新しい物は生まれない。そしてアニメの感動とは創造性であり、新しい物、見たことのない物への驚きだ。自動化ばかりが進むと、やがてはアニメ産業が持っていたクリエイティブその物の基盤を弱くしてしまう。金田伊功氏の技術の素晴らしさとは、「それまで誰も想像しなかった絵の動きを最初にやったこと」にあったはずだ。

著者プロフィール

数土直志(すど ただし)

ジャーナリスト。メキシコ生まれ、横浜育ち。アニメーションを中心に映像ビジネスに関する報道・研究を手掛ける。証券会社を経て2004 年に情報サイト「アニメ!アニメ!」を設立。09年にはアニメビジネス情報の「アニメ! アニメ! ビズ」を立ち上げ編集長を務める。16年に「アニメ! アニメ!」を離れて独立。主な著書に『誰がこれからのアニメをつくるのか? 中国資本とネット配信が起こす静かな革命』 (星海社新書)。


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