アニメ制作の自動化は、単に作業を効率化させるだけでは不十分である。アニメを作るシステムも同時に変える必要がある。技術が変わるからシステムも変える必要があるのか、システムを変えるために技術を導入するのか。恐らくは同時並行だろう。そしてさらに現場スタッフの理解も必要になる。
そして最後の鍵がクリエイティブ(創造性)だ。クリエイティブ自体はAIのような自動化のシステムだけでは生み出すことができない。そしてアニメーションは、そもそも創造性を基盤とした表現である。単に絵を動かすだけでなく、現実には存在しないキャラクターやメカニック、美術、アニメーションの動き、演出、世界観も全てゼロから生み出す創造性こそが作品の基盤にある。
米国アカデミー賞は、アニメーション部門のエントリー条件として、「人間自らが生み出した絵の動き」を挙げている。手描きのアニメーションだけでなく、CGでも動きのタイミングをアニメーターが創造したものはアニメーションとみなしている。逆に言えば、「システムによって自動生成された絵の動き」はアニメーションに含まれない。「アニメーション=動きの創造」だからである。
今後もAIを使った物、使わない物も含めて、アニメ制作の自動化への挑戦は増えそうだ。原画、動画、背景美術、あるいはデザインの一部さえ自動化されていくかもしれない。CG技術が進歩すればなおさらだ。
しかし重要な点は、創造性(=クリエイティブ)だけは自動化できないことだ。かつての名アニメーターの技術を再現はできても、そこからは新しい物は生まれない。そしてアニメの感動とは創造性であり、新しい物、見たことのない物への驚きだ。自動化ばかりが進むと、やがてはアニメ産業が持っていたクリエイティブその物の基盤を弱くしてしまう。金田伊功氏の技術の素晴らしさとは、「それまで誰も想像しなかった絵の動きを最初にやったこと」にあったはずだ。
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