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ホリエモン「お前が終わっている」発言に見る、日本経済が「本当に終わっている」理由“いま”が分かるビジネス塾(2/3 ページ)

» 2019年10月23日 08時00分 公開
[加谷珪一ITmedia]

「同じレベル」の労働者も他国なら豊かな生活

 だがこの話が成立するためには、社会全体が豊かで、一定以上の賃金水準が維持されていることが絶対条件となる。平均的な賃金水準があまりにも低く、社会が貧しい場合には、不本意ながらも著しく労働条件の悪い仕事に就かざるを得ない人が増えてくる。

 では現在の日本における賃金水準については、どう評価すればよいのだろうか。

photo OECD35カ国の平均賃金ランキング。日本は19位に過ぎない(クリックで拡大)

 日本における給与所得者の平均年収は367万円だが(国税庁調べ)、この数字は、多少の上下変動はあるものの、過去20年、ほぼ一貫して低下が続いている。アベノミクス以降、賃金の絶対値は少し上がったが、それ以上に物価上昇が進んでいるので、労働者が実際に使えるお金の額は少なくなっているだろう。

 実は日本の賃金水準は国際的に見てもかなり低くなっており、日本の平均賃金は35カ国中19位でしかない(OECD調べ)。

 鎖国している時代ならともかく、現代社会はグローバル化が進んでおり、一物一価の原則が成立しやすい。例えばスマホはどの国で購入してもほぼ同じ価格なので、平均賃金が安い国の労働者は、賃金が高い国の労働者と比較すると、欲しいモノが買えなくなってくる。

 米国の平均賃金は日本の1.5倍以上もあり、大卒の平均的な初任給も日本の1.5倍から2倍である。その分だけ、米国では物価も高くなるが、だからといって日本で3万円のスマホが米国で買うと6万円になったり、日本で100万円のクルマが米国では200万円になったりするわけではない。

 グローバルに流通する商品やサービスの価格は日本も米国もほとんど変わらないので、結果的に米国の低所得者層が購入できるモノやサービスは日本人の低所得者層よりも圧倒的に多くなる。

 仮に今回の投稿主が、ホリエモンの批判のように、あまり努力をせず現状に甘んじている人物だと仮定しよう。日本ではこうした労働者は、安月給のまま苦しい生活を余儀なくされる。

 だが、これが欧米各国であれば、努力をしない人でも給料の絶対値が高いので、生活水準は日本人よりも高い。投稿主がもし欧米各国で生まれていたのなら、ここまでの状況にはなっていなかっただろう。

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