累計発行部数5000万部を超える漫画『ろくでなしBLUES』。1988年から97年にかけて『週刊少年ジャンプ』で連載され、東京都・吉祥寺にある帝拳高校を舞台としたヤンキーたちによる学園モノの漫画で、ジャンプ史に残る名作だ。主人公・前田太尊の不器用ながらも強くて優しいキャラクター、自分の思いに真っすぐに生きる姿は多くの読者の心をつかみ続けている。
その『ろくでなしBLUES』や、テレビドラマ化されたり映画化されたりした野球漫画の『ROOKIES』、お笑いを題材にした学園モノの漫画『べしゃり暮らし』の作者である森田まさのりさんが、9月24日に初めて漫画ではない書籍を上梓した。タイトルは『べしゃる漫画家』。写真家のタカハシアキラさんが、森田さんの日常や執筆活動をレンズに収めたことをきっかけに誕生した本で、2人の共著となっている。
森田さんが鬼気迫る表情で原稿執筆に集中する仕事風景などを収めたタカハシさん撮影の写真をはじめ、森田さんの仕事観や哲学に触れたインタビューが載っている。
50歳を過ぎた森田さんは2018年、芸人としての一歩も歩み出した。吉本興業が主催する漫才コンクール「M-1グランプリ」に出場し、ベストアマチュア賞を受賞したのだ。その活動の幅は今や漫画だけにとどまらなくなっている。
既に漫画家として揺るぎない成功をおさめ、活躍している森田さんだが、50歳を過ぎて新たな領域に果敢にチャレンジする真意は何なのか。ITmedia ビジネスオンラインの取材に応じ、その理由を明かした。
――森田さんは昨年「M-1グランプリ」に挑戦し、ベストアマチュア賞を受賞しました。それ以前にも、お笑いをテーマにした漫画『べしゃり暮らし』を描き、ドラマ化もされるヒットとなっています。そんな森田さんにとって、漫画家としての仕事も含めて、「お笑い」とはどのような位置付けなのでしょうか。
ほんとのことをいうと、しゃべりがうまかったら今でも芸人さんになりたいんですよ。僕は高校を卒業してそのまま漫画家になったのですが、知識や語彙も少なくて、アドリブも効かないからしゃべるのが苦手なんです。たまたま漫画が描けたので、漫画を描いてきましたが、アドリブを効かせてその場に応じてしゃべって、人を笑わせる芸人さんのことは心の底から尊敬しています。僕だと緊張して何もしゃべれなくなってしまいますから。
――芸人さんを尊敬するようになったきっかけは何でしょうか。
きっかけは島田紳助さんと松本竜介さんがやっていた漫才コンビ「紳助・竜介」だったんですよ。島田紳助さんをはじめて見た時に、しゃべりの巧みさというか話術に引き込まれました。
「THE MANZAI」っていうバラエティ番組が昔あったじゃないですか。あの中で、舞台でお客さんを笑わせて袖から出てくるときに、紳助さんが一瞬、真顔になることがあったんです。その顔を見たときに、これは「人間ドラマ」があるなと思ったんですね。実はそういうところから『べしゃり暮らし』を思い付きました。
――どういったドラマを感じたのでしょうか。
舞台の上で芸人さんが観客を笑わせてふざけるわけじゃないですか。アホなことを言って自虐を言ったりとか、人をばかにしたりとか。なんかいろいろそうやって笑わせてふざけて、アホな顔をしているけど、舞台袖に降りるときにふっと真面目な顔になる瞬間があるんです。この裏では一生懸命練習してきたんだろうなとか、一緒に出てくる相方との間にも紆余曲折があるんだろうなとかね。
本人の努力以外でも、舞台上ではバシバシど突いてはいるけれども、ど突かれた人はそのことをどう思っているんだろう……とか、相方同士の人間関係のドラマも感じます。
本当は一生懸命耐えながら練習や努力を積み重ねているのだろうな……とか、人を笑わせることが好きだから、本来の自分ではない自分を出したりしながらやっているのだろうな、とか――。そんなドラマを感じましたね。
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