累計発行部数5000万部を超える漫画『ろくでなしBLUES』。1988年から97年にかけて『週刊少年ジャンプ』で連載され、東京都・吉祥寺にある帝拳高校を舞台としたヤンキーたちによる学園モノ漫画で、ジャンプ史に残る名作だ。主人公・前田太尊の不器用ながらも強くて優しいキャラクター、自分の思いに真っすぐに生きる姿は多くの読者の心をつかみ続けている。
その『ろくでなしBLUES』や野球漫画の『ROOKIES』、お笑いを題材にした学園モノ漫画『べしゃり暮らし』の作者である森田まさのりさんが、9月24日に初めて漫画ではない書籍を上梓した。タイトルは『べしゃる漫画家』。写真家のタカハシアキラさんが、森田さんの日常や活動をレンズに収めたことをきっかけに誕生した本で、2人の共著となっている。森田さんが仕事場で鬼気迫る表情で原稿執筆に集中する様子などを収めたタカハシさん撮影の写真をはじめ、森田さんの仕事観や哲学に触れたインタビューが載っている。
この本の出版イベントでは森田さんとタカハシさんのほか、本の構成や原稿を担当したライターの唐澤和也さんの3人が対談し、その模様については記事の中編、『ろくでなしBLUES』作者・森田まさのりが50歳を過ぎてから「M-1グランプリ」に挑戦した理由でお届けした。
後編となる今回は、『ろくでなしBLUES』の四天王の1人である鬼塚がいかにして誕生したのかといった秘話や、森田さんがなぜ「『べしゃり暮らし』は一生描き続ける」と宣言しているのか、その真意に迫った。
唐澤: (前編から)僕も皆さんに聞いてみてもいいですか? 森田さんには3作品あるんですけど、特に好きな漫画で、『ろくでなしBLUES』の方。(7割くらいの手が挙がる)。ははあ。『ROOKIES』の方。じゃあ残るは『べしゃり暮らし』。
森田: 1人2回挙げてもいいですよ。
唐澤: ありがとうございます。すごいですね。デビュー作。ちょっと『ろくでなしBLUES』の話をしておきましょう。
森田: 『ろくでなしBLUES』……。あんまり思い入れはないですけど。
唐澤: そんなことないじゃないですか、書籍には四天王の1人、鬼塚誕生秘話も書かれていますよ。
森田: ああ鬼塚ね。まあ主人公の前田太尊があんな感じなので、正反対の伝説な感じの鬼塚を出そうと。そんなこと言っていましたっけ。
唐澤: 「仲間からすら怖がられるような非情な男を出したい」と。
森田: そうです。何で鬼塚を渋谷にしたかっていうと、吉祥寺が舞台なので、鬼塚軍団が電車から降りるシーンが頭に浮かんだんですね。あの絵を描きたいからっていう。
唐澤: ちょっと先生すみません。その話も(書籍を作るときには)聞いていません!
森田: ああ言わなかったっけ。
森田: 井の頭線の電車のドアが空いて、ホームにこうみんながいろんなドアから降りてくるあのシーンが描きたかったんですよ。
唐澤: これですね、皆さん帰ってからゆっくり読んでいただきたいんですけど、豪華なイラストというか、漫画から抜いた100カットがあるんですよ。今の森田さんの逸話を聞いていたら絶対に(その鬼塚軍団のシーンを)抜いていましたよ。
森田: 本を作るときに話していないことに今、気付いた(笑)。井の頭線の終点、渋谷からやってくるっていうことで渋谷。(前田太尊の)吉祥寺、鬼塚の渋谷と描いて、割と都会な感じが続くので、次にちょっと下町みたいな感じにしようかっていうことで、次の薬師寺は浅草がいいなということで浅草にしました。
4人目の葛西は(手で吉祥寺、渋谷、浅草を指しながら)こうきてこうきてこうきたらこのへんがいいなと。最初から池袋と決めていたわけではなくて、地図を見て決めました(笑)。
唐澤: なるほど。
森田: 吉祥寺・渋谷・浅草……ああ池袋みたいな感じで。
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