ここまでは、いわゆる「モノづくり」に対するデザインの話をさせていただきましたが、デザインによってもたらされるもう一つの効果として、「ブランディング」の話が挙げられるかと思います。ここからは、ブランディングの観点から、いくつかの事例を紹介します。まず、こちらは、日本経済新聞社のプロジェクト事例です。
われわれは、コーポレートブランディングのパートナーとして、日経ブランドガイドラインの制定、コーポレートロゴや日本経済新聞横題字のリファイン、社員向けブランドサイトの構築などをお手伝いしました。結果的に約2年間にわたり、伴走させていただいた形になります。
これは現在進行形で取り組んでいるメルカリの事例ですが、デザイン組織構築やブランド構築のお手伝いをしております。昨年実施されたロゴマークのリデザインもこのプロジェクトの成果のひとつです。
こちらは、新潟の地酒メーカーとして知られる朝日酒造の事例です。「久保田」という歴史のあるブランドがあるのですが、こちらのブランドデザインを担当しています(注:「久保田」は、天保元年(1830年)より新潟県長岡市の越路地域に酒蔵を構える朝日酒造が、創業時の屋号「久保田屋」の名を冠し、1985年から製造する日本酒ブランドのこと)。デザインとマーケティングの要素を同時に投入し、新しい顧客を開拓するような仕事が進行しています。
上記のようなプロジェクトに取り組む一方、私自身、もう一つの顔として、教育関係の仕事をしています。具体的には、ロンドン・カレッジ・オブ・アートと呼ばれる美術系の大学院大学の中に、「イノベーション・デザイン・エンジニアリング」と呼ばれる学科があるのですが、2014年から17年までの間、客員教授として教育に携わっていました。この学科は、世界中からさまざまなバックグラウンドを持った次世代のイノベーターの”卵”たちを集め、2年間の徹底的なトレーニングを施すことによって、イノベーション人材を育てることに取り組んでいます。
私自身、この学科の出身でもあるのですが、現在は、フェローという立場で、大学のサポートをしています。この学科は、例年、Apple(アップル)、Google(グーグル)、サムスン、Dyson(ダイソン)などのグローバル企業に多数の人材を輩出していることで知られています。
また、グロービス経営大学院でも、ビジネス系の方々を中心に、デザインを学んでいただく『デザイン経営(デザイン駆動型のイノベーションとブランディング)【Produced by Takram】』という授業を一コマ担当しています。この授業の中でも扱っているスキルセットについてまとめたのが、『イノベーション・スキルセット』です。それでは、本書のトピックの中から、いくつかポイントをピックアップして解説したいと思います。
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