上記を踏まえた上で、これからのデザインを学ぶ上で有益と思われる事例を一つ紹介します。米国のニューヨークに本拠を置く「PELOTON」という企業のケースです。
同社が提供している製品は自宅で使用するエアロバイクです。ビジネスモデルについては、エアロバイク自体を販売した上で、タブレット上で展開されるサブスクリプション型の「オンラインジム」のサービスを提供しています。面白いのが、一般的なエアロバイクは典型的な「レッドオーシャン市場」であり、平均的な価格帯は3〜5万円くらいで、各社とも「原価スレスレ」で販売しているような状況です。一方で、PELOTONの価格は約2000米ドルであり、平均的な市場価格の5〜6倍の価格設定です。
加えて、オンラインサービスの支払いが月額40ドルかかりますので、年間で約5万円の出費となります。つまり、ユーザーは初年度にPELOTONに対して約25万円を支払うモデルになっています。そして、実際、どれくらいの売上高になっているのかについてですが、驚くべきことに、売上が1000億円近くあります。時価総額は5000億円とスライド資料では記載していますが、これはシリーズC(スタートアップ成長の最終局面)調達時点での評価額です。
PELOTONのビジネスモデルとしては、モノはモノとして売った上で、その上にSaaS(Software as a Service(サービスとしてのソフトウェア))をくっつける「SaaS Plus A Box」という形を採用しています。私は、この事例を日本企業の方々によく紹介するのですが、それはなぜかと言うと、このプロダクトが非常に「第4次産業革命」的であるためです。第4次産業革命というのは、簡単に言うと、フィジカルとデジタルが結合するという世界観ですが、PELOTONのようなモノは10年前は決してあり得なかった訳です。
そして、シェアリングエコノミーの文脈で登場するシェアバイクと一線を画しているのは、PELOTONの場合、ハードウエアの製造コストをユーザーが支払っていることです。この約20万円のハードウエアを”売り切る”力がすごい訳です。そして、まさにここに「デザイン」の力が介在しています。
より具体的に言えば、エアロバイク本体とタブレットのUI/UX、PELOTONオリジナルのウエア、公式サイトの全ての要素が一つのデザインの哲学で貫かれています。
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