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足かけ10年の組織変革 コニカミノルタが語る「DX推進」に必要なもの変革の最後の一手は(3/3 ページ)

» 2019年11月27日 08時00分 公開
[伊藤健吾ITmedia]
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変革の最後の一手は「事例を示すこと」

江口 もう1つ、既存の組織を巻き込みながら新しいことをやっていく上で大事だと思っているのが、小さくてもいいから具体的な成果や事例を示していくことです。

 先ほど、介護施設での画像IoTソリューションの活用事例をお話ししましたが、開発を始めたころは懐疑的な声も多くありました。「社会課題を解決する」と理想を掲げたところで、当時の社内には画像認識ソフトの専門家もクラウドサービスの運用経験者も十分にいませんでしたから。何とか開発体制を作ってからも、1〜2年はお客さまに使っていただけるレベルにならず、事業部サイドから「やれると言ったのにできていないじゃないか」と指摘されたこともあります。

 そこでエンジニアが実際に介護施設に寝泊まりして、その中で現場の課題を見つけて、解決に向けたソリューションを自分で作って持っていくという地道な取り組みを何度も重ねました。私自身も、一緒に動く事業部のトップと物理的に席を近くして、何かあったらすぐ議論できるようにしていました。

 途中、思ったように機能せず、施設の方々に「もう帰ってくれ」と言われたこともありましたが、失敗から学んで本当に使えるソリューションにしていくことで、無事に採用していただくことができたのです。

 こういう先行事例を、「価値創造フォーラム」という年1回の研究発表会で共有したり、全社グローバルで新しいトランスフォームの取り組みを表彰する「Transform Awards」でプレゼンしたりと、機会を見つけてはシェアするようにしてきました。失敗克服のプロセスも含めて社内でシェアしていくと、徐々に社内の見る目が変わっていきます。例えば、組み込みソフトの開発しかやっていなかったような現場エンジニアも、「こうやってビジネスを作っていくのか」「自分たちは何ができるのだろう」と考えてくれるようになりました。

及川 DXの専用拠点を作ったり、人材育成をしていくのも重要ですが、結局はユーザーの役に立っていると示していくことが周囲を巻き込む鍵になるのですね。

江口 こういう価値創造の大切さみたいなことが社内に浸透するまで、3年くらいはかかったと思います。他にも、私たちが取り組んでいるアジャイル開発を社内に広めるために、国内外の専門家をお呼びして数百人規模の勉強会イベントを開催するなど、会社全体を巻き込むための施策をたくさん仕込んできました。

 その結果、開発部門だけでなく管理部門からも「うちもアジャイルの手法を取り入れたい」という依頼がきて、一緒にアジャイルをトライアルするような取り組みも始まっています。

及川 DX推進では組織全体を変革していくのが必要だというお話ですね。勉強になりました。

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