リーマンショック後の不景気、これまでにない低価格帯居酒屋の台頭、東日本大震災以降の消費スタイルの変化――。ブラック企業批判に加え、当時の社会情勢は「中途半端な低価格」になってしまったワタミを直撃した。14年、ワタミは上場以降初めて49億円の最終赤字を計上する。アルバイト採用にも苦心し始めたこともあり、同年から労働環境改善に着手し、不採算店舗60店の閉鎖、「和民」以外の専門店業態への転換などを進めていく。
しかし桑原豊社長(当時)が経済誌のインタビューに対して「ブラックという定義は今でも困惑している」、「ワタミがブラックだとは全然思っていない」、「ワタミに労使関係は存在しない」、「今のワタミに労働組合は必要ない」などと発言したことがさらに批判を強くさせてしまった。
こうした批判もあり、翌15年度3月期の最終赤字は126億円にまで拡大。2期連続の赤字、かつ主力である外食事業は43カ月連続で売上が減少しており、手元の現金は底をついていた。このまま赤字が拡大すると、金融機関からの融資も引き上げられるのは確実という状況であった。
追い込まれたワタミは苦渋の決断を行う。「将来の中核事業の1つ」とされていた介護事業を210億円で売却することで、キャッシュアウトをすんでのところで回避。しかし、介護事業売却を伝える報道では、社名に当時の同社を象徴する一言が添えられていた。
「経営再建中のワタミは……」
かたくなに自社がブラック企業だと認めてこなかったワタミだが、15年に現社長の清水邦晃氏が就任してようやく、対外的に「世間のブラック企業との批判を真正面から受け止める必要がある」との発言がなされた。ここからワタミは、聖域なく過去を見直し改善を進めていく。
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