最後に、懲戒処分を行うこと自体は可能としても、その重さの程度が問題となります。
「東京大学教職員就業規則」第39条では、戒告、減給、出勤停止、停職、諭旨解雇、懲戒解雇の6種類の処分を定めています。
しかし、どのような行為を行ったら、どれくらいの重い処分になるのかまでは具体的には定められていません。
この点については、「東京大学教員懲戒手続規程」においてルールが定められており、教員懲戒委員会を設置して調査や審議を行い、本人にも弁明の機会を与えた上、懲戒処分の要否及び重さを決定するとしています。
とはいえ、教員懲戒委員会が決定したならば、いかような処分も許されるというわけではありません。行為の内容と処分の重さのバランスが取れている必要があります。
今回のツイッターへの投稿は、ツイッターが拡散されて社会的影響は大きかったとはいえ、
を踏まえると、懲戒解雇までは行き過ぎと考えられ、実務上の温度感としては、戒告や減給が相当な処分ということになるのではないでしょうか。寄付講座への企業からの支援の停止などの経済的損失も考えると、出勤停止などのもう一段重い処分も視野に入ってくるかもしれません。
しかし、いずれにしても、諭旨解雇や懲戒解雇といった、教職員の身分を剥奪(はくだつ)するまでの処分は、法的には重すぎると考えられます。
まとめると、今回の大澤氏への処分としては、懲戒処分を行うこと自体は可能ですが、戒告や減給が相当なところ。いっても出勤停止といったところになるでしょう。
実際に東京大学が大澤氏に対して、どのような懲戒処分を行うかは現時点では分かりませんが、本稿では筆者の個人的な主観は横に置き、客観的な法律上の考察として、事例を分析してみました。
また、本稿は、1つの事例の分析としてだけではなく、一般論としても、懲戒処分は感情的な判断や、使用者の個人的価値観で自由に行っていいものではなく、就業規則上に根拠があることはもちろん、社会的相当性のある処分の重さでなければ法的には無効であるという点においても、参考になれば幸いです。
上場企業の経営企画室等に約8年間勤務。独立後、ポライト社会保険労務士法人を設立。勤務時代の経験も生かしながら、経営分析に強い社労士として顧問先の支援や執筆活動に従事。近年はHRテック普及支援にも注力。
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