クルマはどう進化する? 新車から読み解く業界動向

「日本の自動車生産を維持している自負はある」 マツダ藤原副社長インタビュー(6)池田直渡「週刊モータージャーナル」(7/8 ページ)

» 2019年12月05日 07時00分 公開
[池田直渡ITmedia]

日本の自動車生産を維持している自負はある

池田 いやあ、でも、あとは本当に利益だけですね。

藤原 利益だけです。本当に申し訳ないです。

池田 ただ、クルマがこれだけよくできている以上、本当に成功してもらいたいんですよね。さっきの変わらないことをどうやって変えさせるかが大変って話は、トヨタの友山さん(副社長:友山茂樹氏)が面白いことをおっしゃっていて、「うちは自分たちがやっていることは絶対間違っているんだ」と。「間違っているからカイゼンができる。われわれはカイゼンができるってことが絶対正義だから」(笑)。

藤原 素晴らしいですね。

池田 自分がやっていることが「間違ってない」ってことは、カイゼンしないってことです。

藤原 今の話は、すっごく面白い話ですねぇ。

池田 面白い(笑)。

藤原 カイゼンという言葉は、トヨタの用語ですから、普通の言葉にすると、変革なんですよね。悪いと思っていたら変えるってことは。それをずっと徹底的にやる会社なので、すごいと思うんです。

池田 「カイゼン後はカイゼン前」って言葉がセットですから。

藤原 最近、トヨタとおつき合いしていて、あのカイゼンの徹底度は怖くて怖くて、あれは絶対すごい会社です、あそこは。

池田 すごいですね。

藤原 はい、すごいです、本当に。怖いです。でもあともう一つだけ言わせていただくと、トヨタには全く及びませんが、マツダとしては日本の自動車生産を維持している自負はあるんです。まあ為替に弱いんですけど、国内生産が日本の(自動車メーカーの)中で2番目なんで、生産量は(笑)。これだけは私、逆に自慢なんですよ。軽自動車も作っていないのに、日本の生産量はトヨタに次いで2番目で、スズキよりも多いし、ホンダよりも多いし、日産よりも多いって。これは何かというと、日本の経済を何とかしたいという思いもあるし、そこまで大きなことを言えないとしても、広島、山口の経済は、支えているんだと。

広島宇品工場

池田 それはそうですね。

藤原 海外に出ていけば為替の安定は図れるんですけど、やっぱりそこは絶対やっちゃいけないと思っています。広島、山口と一緒に、共に作ってきているのもありますし、かつて助けられているので、広島にいなかったら多分今はないんですよ。住友銀行から多分見放されてたんですけど、「おまえらがもしやめたら、広島経済はおかしくなる」ってフォードの資本を入れて残してくれた。私は広島に助けられているブランドだと思っているので、そこは安易に外に出てはいけないというのはあるんですよね。

池田 そこは責任なんですね。

藤原 まあ、そう。責任です。世界各地で一緒にやってくれている連中にも同じく責任があります。北米でずっと50年頑張ってくれている販売店の人たち。その人たちのためには、米国にちゃんと工場を造ってやらないかんっていう覚悟もあるし、よく豊田章男さん(トヨタ自動車社長)が言う、出ていったところは自分のホームタウンだから、そこをちゃんと大事に、切ることなく、ともに生きていこうというところはやっていかなければと。まあ自動車業界って利益追求型じゃなくて、どっちかっていったら、みんなと共に経済をというところしか、ないんじゃないかと思うんですよ。

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