さて、次に見るべきは、それぞれのタイプがどのように就活を終え、初期キャリアを過ごしているのかです。それぞれのタイプから既に入社した若手社会人のデータを用いて、パフォーマンス、そして本人の満足度を分析し、下表にまとめました。
まず、就活の終了時の結果を見ると、大きな差ではないですが、「やりがい貫徹タイプ」が内定を最も獲得しており、逆に少ないのは、「省エネタイプ」です。それぞれ受ける企業群が異なりますので、この数は、内定の「獲得しやすさ」というよりも、「いつ就活を辞めるか」に関係している、と読みとるのが正確でしょう。
やりがい貫徹タイプは最も希望の職業へのこだわりが強いタイプでしたので、納得できる企業から内定が出るまで就活を続け、結果的に内定獲得数が多くなるものと思われます。逆に、すぐ終わらせたがる「省エネタイプ」は、1社内定がでた時点で就活を辞める学生が多いことがうかがえます。
入社後の状況を見ると、最も会社満足度が高いのは、計画的に動いている「就活必勝タイプ」です。ジョブパフォーマンスは並ですが、3年目までの会社満足度を見ても、最も高めにでています。やはり計画的に企業の情報を集め、納得できる企業に入れているのはこのタイプのようです。
そして、入社後状況での最もリスクが高いタイプは、「ローカル就職タイプ」です。全く就活にやる気の無いように見えた「省エネタイプ」よりも、入社後満足度が大きく低く、そしてパフォーマンスも低くなってしまっています。
「地元」という勤務地の方にこだわることによって、どうやら仕事内容や企業選びがおざなりになってしまい、結果的に満足行くような初期キャリアを過ごせていないようです。逆に、「仕事のやりがい貫徹タイプ」は、ジョブパフォーマンス、満足度ともに高めにでており、目的意識を持って就活をしていたことが良い方向に作用しているようです。
今回は就活生を大きく5つに分類してみました。データを分析している側から見れば、これは「粗い」目でしかありません。もっと複雑さを許容しさえすれば、より微細なタイプに分けることも可能です。そうしたことを鑑みても、「今どきの就活生」なる像は決して一枚岩ではありません。そうした前提のうえで、上述したような分類が企業側にとって学生を見定める参考になればと思っています。
初期キャリアは、人の人生に一度しか来ません。そうでなくても、日本の雇用社会は、景気含めた大学新卒時の状況にキャリアが大きく左右され続けます。そうしたとき、大ざっぱなステレオタイプによって採用可否が判断されることは、学生本人にとっても、そして採用する企業にとっても不幸なことです。
多様性を増す採用活動の中で、AIや機械学習、その他アセスメントを用いた客観的・科学的な採用活動は広がっていますが、採用活動にどうしても入り込む認知のバイアスをいかに丁寧に取り除いていくかは、引き続き重要なポイントになるでしょう。
調査手法:個人に対するインターネット調査
調査対象:居住地域:全国 18歳以上30歳未満の大学生・初職入社1-3年の社会人(離職者含む) 合計サンプル数 1700人
調査時期:2019年2月
小林祐児(こばやし ゆうじ)
パーソル総合研究所 主任研究員
NHK 放送文化研究所に勤務後、総合マーケティングリサーチファームにて、各種の定量調査・定性調査・訪問調査・オンラインコミュニティー調査など、多岐にわたる調査PJTの企画-実査を経験。2015年入社。専門は理論社会学・社会調査論・人的資源管理論。
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