昨今、「忘年会スルー」したがる上司も激増している。上司の説教や、自慢話に付き合いたくないと、若い世代の人たちが忘年会を嫌がっているだけではない。
「一応課長だから、部下たちと忘年会をしたら私が払いますよ。2次会も当然、私のおごりです」
先述した課長の嘆きはつづく。
「でも、おごったって、何の見返りもない。上司が部下におごるのって、義務なんですかね。部下の残業分まで仕事してるっていうのに」
そう嘆くのもムリはない。相手の喜ぶ顔がみたい、自身の甲斐(かい)性を見せたいという欲求から、誰かにおごりたいという気持ちが芽生えるのは自然のこと。
とはいえ「おごる」側は、無意識のうちに等価交換を考えてしまうことがある。等価交換とは、同等の価値があるものを相互交換することだ。どんな事情であれ、おごった側は、知らず知らずのうちに「見返り」を期待する心理が働くものだ。
「同等の価値」を要求しなくとも、上司が少しばかりの期待をいだくことは自然だ。特に「おごり慣れていない」人は意外と、そのような心理に陥ってしまうことがある。
しかし、部下にとって「見返り」を期待されて「おごられる」のは、あまり気持ちがいいものではない。だから「おごる」側は“ギブ&テイク”を考えずにおごった方がよいと私は思う。
ところで、覚えておいてほしい心理現象を紹介する。
それは「刺激馴化」だ。刺激馴化とは、ある刺激を受け続けると最初に受けた反応が徐々に鈍くなっていく現象のことを指す。「おごられる」側は、最初のうちは感謝しているが、同じ相手におごられ続けると、その感謝の気持ちが徐々に薄れていく。そのため、次第におごられることが「当たり前」だと受け止めていくのだ。
さらに、おごられることが当然となり、だんだんと「ありがとう」の言葉も言わなくなる。刺激馴化が進めば、おごられないと残念に思うようになることもある。
「先日、『今日は割り勘な』と言ったら、あからさまにムッとされましたよ。それも、1番出来の悪い部下から」
「それが刺激馴化ですよ。あまり気にされない方が……」
おごられ続けた過去が、その感情を発生させたといえる。その部下の性格が傲慢で、謙虚さに欠けているわけではないのだ。
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