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今年中国企業で最も目立った「アリババ」 その1年を振り返る(3/3 ページ)

» 2019年12月20日 09時00分 公開
[山谷剛史ITmedia]
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 また、BATは企業買収による拡大が目立つが、今年は控えめだった。そんな中注目を集めたのが、アリババによる「Kaola(コアラ)」の買収だ。

 Kaolaは大手ネット企業「網易(ネットイース)」のサービス。越境ECではアリババの「天猫国際」よりも優位にいたが、アリババが9月に20億ドルで買収。ブランド名は「コアラ」のまま、アリババ傘下となった。これにより、アリババは越境ECのシェアで半数以上を占めるようになっている。

photo アリババが買収した「Kaola(コアラ)」(公式アプリより)

話題のニューリテールには暗雲も・・・

 一方、同じECでも「ニューリテール(新零售)」では、良い話題よりも悪い話題の方が多かった。ニューリテールは、オンラインとオフラインを融合することで購買から配送までの業務を効率化しようとする取り組み。同社のネットスーパー「盒馬鮮生(フーマー)」が火付け役となり、中国の大手企業も対抗サービスを展開しつつある。

 しかし、ニューリテールの実現には同じ都市内に多数の店舗を展開し、配送網を構築する必要がある。盒馬鮮生こそ中国全土の都市へ展開を進めているが、こうした次世代型のネットスーパーを実現できているのは北京、上海、深セン程度で、それ以外の都市ではまだまだだ。

 アリババでは小型店舗「盒馬mini」、ビジネス街向けの「盒馬F2」、コンビニ的な「盒馬小站」、老舗スーパー「盒小馬」といった、盒馬鮮生に続く新しいニューリテールの販売形態を模索しているが、定着には至らず、一部店舗は業績不振で閉鎖している。前途多難といえそうだ。

photo アリババのネットスーパー「盒馬鮮生(フーマー)」(アリババジャパンのサービス紹介より)

 最後にアリババグループ全体の決算から、同社の1年を振り返ってみよう。

 アリババグループの2019年1〜3月期(2019年第4四半期)の売上高は、前年同期比51%増の934億9800万元(約1兆5900億円)。営業利益は同5%減の87億6500万元(約1490億円)と増収減益だった。

 続く4〜6月期(2020年第1四半期)の売上高は、前年同期比42%増の1149億2400万元(約1兆8387億円)で、営業利益は同204%増の243億7500万元(約3900億円)。

 7〜9月期(2020年第2四半期)の売上高は、前年同期比40%増の1190億1700万元(約1兆9042億円)。営業利益は、前年比51%増の203億6400万元(約3258億2400万円)と、2期連続で増収増益だった。

 中国小売市場におけるアリババの月間モバイルアクティブユーザー数は、7億8500万人(2019年9月末時点)と、6月末から3000万人増加している。また、中国小売市場における年間アクティブコンシューマー数は6億9300万人。2019年6月末時点から1900万人増加した。巨大IT企業の1つとして、今後も目が離せない。

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