「北斗星」の現状に失望と期待 鉄道クラウドファンディング“成功の条件”とは杉山淳一の「週刊鉄道経済」(3/6 ページ)

» 2019年12月23日 07時00分 公開
[杉山淳一ITmedia]

「ネクストゴール」で補修をする約束だった

 この客車を保存するクラウドファンディングプロジェクト「解体の危機にある27年間愛された寝台列車『北斗星』を守りたい!」は、当初1000万円を目標として始まった。その使途は、客車1台の移送費と設置場所の土台や線路の敷設費だった。そして予定通りの賛同者が集まり、もう1台追加するために、プラス250万円のネクストゴールを設定。これもクリアした。しかし、プロジェクトはさらに、1600万円の新たな目標を掲げた。その理由を以下に引用する。

応援コメントでもご要望の多かった保存後の維持をしっかりとしていくために、さらにネクストゴールとして1600万円を目指すことにしました。

維持費に関しては委員会でも当初から必要なものだと考えていました。しかし、まずはなによりも車両の保存が優先ということで、車両の保存を目指してクラウドファンディングをさせていただきましたが、全国からの想像を超えるご声援に、皆様に甘える形となりますが、せっかく北斗星を保存するなら最良の状態で保存しよう、皆様に見に来ていただいたときに喜んでいただけるようにしようと決意いたしました。

 この最終目標には届かず、プロジェクトは総額1588万5000円で終了した。1600万円には届かなかったけれども、2台の車両移送費と設置費用を差し引いて、338万5000円の維持費が残った。この費用で車体全体の補修はできない。屋根をかけるにしてもこの金額では足りない。ホームセンターのカタログを見ると、一般家庭のクルマ1台分程度だ。結局、協議の結果、客車の屋根全体を補修した。ここから雨漏りすれば、現状は無事に済んでいる客室も傷んでしまう。

ロビーも当時のまま

 北斗星車両保存プロジェクトは、時間の経過とともに違和感が募り、現地に行って後悔した。しかし、それを胸の内にしまわず記した理由は、このプロジェクトに新たな動きがあったから。それが冒頭に記したゲストハウス構想だ。この改装費用こそクラウドファンディングに適していると思う。1泊宿泊できる権利をリターン品として用意してくれるなら参加したい。応援したい。

開放型B寝台は扉がついており、4人用個室として利用できた

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